今年流行した動画投稿アプリのTik Tokには、いわゆる自分のことが大好きで、そんな自分のことを見てくれてチヤホヤされたい…と感じてしまう、ナルシストな人が集まる場所として有名と言ってもいいでしょう。
筆者も(怖いもの見たさで)Tik Tokをダウンロードし、投稿された動画やトレンドを追っていましたが…まぁ、なんというか「自分のことを見てくれ!」と言わんばかりのカメラ目線な動画ばかりで、その勢いに圧倒されそうになることが多々ありました。
なお、ダウンロードした目的は単純に興味本位のみではなく、どうしてナルシストな人ばかりが集まってしまうのかという原因を自分なりに考えてみるためでもあります。
今回は実際に筆者が見て感じたことや、Tik Tokの仕組みや他のSNS・ウェブサービスとの立ち位置などから、Tik Tokにナルシストな人が多く集まる理由について考えたことを、お話しいたします。
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目次
自分の顔を全面に押し出せる雰囲気がTik Tokにはある
インスタグラムやtwitter、Facebook、YouTubeなどの有名なウェブサービスと比較すると、Tik Tokのメインは動画です。そして、アップする動画の多くは自分の顔を全面に押し出すことが推奨されている特徴を持っています。
実際にTik Tokでは、自分の肌の印象を変える美肌フィルター、顔の輪郭そのものを変えるフェイスラインフィルターと、動画として映る顔を編集する機能が充実しており、まさに自分で自分の顔を偽る(若者言葉で言うところの「詐欺れる」)ことができます。
なお、インスタグラムとTik Tokといういかにもナルシストで自己愛が高そうな人が好むウェブサービスを比較した場合、ナルシストな人からすれば、前者はおしゃれで非日常的な雰囲気を感じる食べ物、風景、景色、服装、動植物など、あくまでもメインになるのは自分以外のものです。
もちろん、インスタグラムでも自分の顔を写真・動画でアップすることは可能ですが、Tik Tokと比較すると、インスタグラム独特のおしゃれな世界観を自分の顔だけで表現することは難しく、「インスタグラムらしくない」というバッシングが来ることがあります。
自分の顔を載せるにしても、あくまでもメインは自分の顔写真ではなく、おしゃれで非日常的なものが主役です。自撮りをアップする場合は、自分は脇役とフレーム内に収まることがインスタグラムにおいて高評価を得るための戦略の一つです。
もちろん、Tik Tokにもインスタグラムのようなおしゃれや非日常の要素がある動画を投稿しているケースもありますが、主役と脇役の立場が入れ替わっており、自分の顔を主役にして堂々と投稿できるので、ナルシストな人が集まっているのではないかと分析できます。
Tik Tokは身近な動画で手軽に自分をアピールできる場所だからナルシストには好都合
もちろん、同じ動画ならYouTubeのように、多くの人が集まるサービスを利用するのも方法の一つだとは思います。
しかし、ナルシストな人の視点に立ってYouTubeを分析すると
- ちゃんとした見れる動画を作る場合、自分で動画編集や加工をしなければならず、初期投資や手間の煩雑さネックになっている。(tiktokはスマホの内蔵のカメラでOK、アプリ内で加工可)
- いわゆる人気ユーチューバーが投稿している動画はだいたい3~5分程度、場合によっては10分超が目安。ただ自分のことを見てくれて評価が欲しい人が作りたい動画としては、3分以上自己アピールをしてばかりでは間が持たなくなるので、Tik Tokのような短時間動画だと非常に相性が良い。(なお、Tik Tokの動画の長さは10~15秒程度、長さで言えばTVのCM1本分)
- 言葉選びの無さやトークスキルにコンプレックスがあると、YouTubeのようなある程度動画時間の長さが必要になる場所では、動画を投稿しづらい。
- 既に有名なユーチューバーの人が多く活躍しており、新入りユーチューバーとして参入しても人気を獲得しづらいことが容易に想像できてしまう。
などが原因して、YouTubeではなくて、かなり歴史が浅く且つ手軽に動画を投稿できるTik Tokの方がナルシストな方のニーズを上手く掴んでいるのだと分析できます。
なお、補足ですがYouTubeはアメリカにて2005年2月からサービス開始。日本でのサービス開始は2007年。一方Tik Tokは中国にて2016年9月からサービス開始。日本でのサービス開始は2017年とされています。
言葉選び、トーク力、声の才能がなくてもアピールできるTik Tokの強み
Tik Tokの動画の代表例と言えば、JPOPの音声を流しながら、お芝居をするような動画を思い浮かべる方が多いと思います。
Tik Tok特有の動画に対して「なんで自分は喋らず、音楽に自分を合わせるのだろう…」という、疑問を抱く方はきっと多いと思いますが、考えられるのが「コミュニケーションに関するコンプレックスを隠したまま、承認欲求を満たせる」という仮説です。
ここでいう、コンプレックスとは
- 語彙力や言葉選びのセンス、文章の組み立て方など、いわゆる文章力が乏しいこと。
- 面白い話ができる、投稿されたものを見る人を飽きさせない話し方が上手くできないこと。つまりトークスキルがないこと。
- 声質、声域のように自分の声そのものに対するコンプレックス。(声が高すぎor低すぎて聞き取りづらい、ぶりっ子っぽく聞こえる声…など)
など、コミュニケーションをする上ではまず外せない要素に関するコンプレックスを指します。
Tik Tok特有の動画は、こうしたコミュニケーションに関わるコンプレックスを持っている人でも、そのコンプレックスを意識しなくて済む。そして、動画を見ている人にもそのことを悟られずに済むという特徴があります。
なお、twitterやFacebookの場合は、文章力のなさやトークスキルの派生と言える話の組み立て方の下手さは如実に表れてしまいます。
YouTubeの場合は、大前提として自分で喋らなければ話にならないので、声のコンプレックスを隠せないのはもちろんのこと、長時間の動画の間を持たせるためのトークスキルの無さも、動画に強く反映されてしまいます。
インスタグラムはそこまで文章力やトークスキルが必要ではなく、声出しをする必要もないので、コミュニケーションに関わるコンプレックスを持ってるナルシストな人向きとは言えるものの、上述したようにあくまでも自分は脇役であることが推奨されるので、承認欲求が十分に満たせるとは言い難いものです。
そんな人にとって、JPOPを音声替わりにして自分をアピールすることが推奨されるTik Tokのような場所は、たいへん好都合だと言えます。
…こうして書くと、Tik Tokに集まるナルシストな人は、これといった才能もなく、また才能を磨くための努力やコンプレックスの克服をしたがらない。
そのくせ、手軽に、効率的に、合理的に、そしてなるべく速やかに人気者になってチヤホヤされたい願望だけが人一倍強い残念な人のように感じてしまうという気持ちが芽生えてしまうのも、否定はできないような気がします。
ただし、こういったどうしようもない人間臭さを感じさせる人が集まって、ひとつの流行を生み出している光景を見ていると、どうしようもない人間味を感じさせるナルシストな人を対象にしたビジネスが、今後も展開されていくのではないのか…とも感じた次第です。
ビジネスをする側からすれば、ナルシストな人ばっかりが集まって、つい「うわぁ…」という声が出てしまいそうなサービスであっても、普段の生活で生きづらさや疎外感を覚えているナルシストな人がこれだけ集まり、アプリを利用して承認欲求を満たせて幸せを噛み締めていると考えれば、これもまた健全な経済活動であり、社会貢献の一種だとも感じます。
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