会話中の沈黙が怖いと感じる心理・背景について

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誰かと喋っているときに、話が途切れてしまったり、沈黙してお互いに黙り込んでしまう状況に強い恐怖や不安を感じてしまう人がいます。

この恐怖の原因は、沈黙そのものに対する否定的な思い込みや、黙ってしまうことで相手の表情の変化がなくなってしまうことへの恐怖。

その他にも、コミュニケーション能力(コミュ力)が価値あるものとして尊ばれる昨今だからこそ起きる、コミュ力の無さを沈黙と言う形で表現してしまうことへの焦り、気まずさなどが考えられます。

今回はそんな会話中の沈黙への恐怖心の心理、及びその背景についてお話しいたします。

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どうして会話中の沈黙が怖い、不安と感じるのか

他人を不愉快にさせてしまったように感じて不安を感じる

それまでは問題なく会話を楽しめていたのに、何らかの発言や話題の降り方が原因となって、急な沈黙を招いてしまった。

この時に、「沈黙を招いた=他人を不愉快にさせるようなことをやってしまったのではないか?」と感じて、不安や気まずさを覚えてしまうのです。

実際に、会話の中で沈黙する場面と言うのは…

  • 相手が触れて欲しくない話題を振ってしまった。(例:隠しておきたいプライベートな話や、その人がコンプレックスと感じている話題など…)
  • 相手を怒らせるような話題を振ったり、降り方喋り方をしてしまった。
  • 相手が興味のない話題を振ってしまった。

など、どれも弾むような会話ができるいい雰囲気とは言えず、どことなく重くてピリピリとした緊張感・不快感を想起させるものであることが目立ちます。

なお、心理学では沈黙する事は、受動攻撃であると解釈することもできます。

受動攻撃とは、怒りや不満などを間接的な行動により表現することを指し、沈黙は相手に間接的に不快感を伝える事は攻撃行動、敵意を表明する行動の一種であるとも言えます。

「沈黙=受動攻撃」であるとした場合、相手が沈黙されると、自分自身に向けて敵意を向けられていると感じるので、不安や恐怖を覚えてしまうのも至って自然です納得できます。

なお、これは相手の視点に立ってみても同じで、お互いにお互いに沈黙という受動攻撃により不快感を示しているからこそ、その場の雰囲気が悪化し居心地の悪さをお互いに感じてしまうのです。

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相手の感情が読み取れなくなり不安に駆られる

相手となにかしら会話しているのなら、その人が楽しそうだとか、嬉しそうだとかが話すときの口調、表情の変化など想像できます。しかし、沈黙の場合はそうはいきません。

まず表情の変化はなくなり、多くの場合は真顔になってしまうものです。そんな真顔の相手を見ても、今相手がどのような感情を抱いているのかが理解しづらく、ましてや親しみやすさなんて抱くこともない。

その結果、相手が何を考えているのかわからない不安や得体の知れなさから、恐怖心を抱いてしまうのです。(なお、これは「黙る=受動攻撃されている」と考えるものとは別のものとする)

なお、人間はコミュニケーションにおいて相手の感情を把握するときに「視覚(55%)>聴覚(38%)>言語情報(7%)」の順で、把握しています。(=メラビアンの法則)

メラビアンの法則に基づけば、相手が沈黙すると

  • 視覚情報は相手が真顔なので限りなく下がる。(※表情の変化こそないが、真顔で黙っている相手そのものから得られる情報は0ではない)
  • 聴覚情報は相手が黙っているので、ほぼ0になる。(※「ため息」など耳に訴えかけてくるものを聴覚情報に含めれば、完璧に0ではないと言えるので「ほぼ0」と表記)
  • 言語情報は相手が黙っているので0になる。(※ノンバーバルコミュニケーションは含めない)

と、得られるはずの情報がガクンと減り、相手の感情を気持ちを伺うことは非常に難しくなってしまう。

この時に感じる気まずさや違和感などの不快な感情が、沈黙することへの強い恐怖感を招いていると言えます。

その場のテンションを下げてしまった事に罪の意識を感じてしまう

楽しく盛り上がっている会話をしている最中に、スベってしまいその場の沈黙を招いてしまったとなると、その場のテンションを下げてしまった事に対して罪の意識を感じてしまう。この罪の意識こそが、沈黙に対する恐怖や不安と結びついていると考えられます。

後述するように、今やコミュニケーション能力が価値あるものとして尊ばれる、おしゃべりができることや和気藹々と盛り上げる雰囲気を作る事が大変価値のあるものとみなされています。

しかし、そのことは一方で雰囲気を盛り下げてしまう行動はコミュニケーション能力の低さを表し、恥ずべきもの、罪深いものとして見なされるだけでなく、強く非難されたり魅力のない人だとみなされ見放されてしまうこともあります。

自分はコミュ力がない人間だと思われることに恐怖・不安を感じる

上からの続きですが、沈黙を招いてしまった事を「自分はコミュ力がない人間であり、そしてコミュ力のなさを多くの人に露呈させしまった」と考えてしまうことで、強い恐怖を抱いてしまうのです。

コミュ力がない人間だと認識されてしまえば、

  • 自分は他人から嫌われるかもしれない。
  • 扱いづらい人だと思われ人が寄ってこなくなるかもしれない。
  • 面白い話ができず、その後の雰囲気を下げてしまうだけなので、自分と付き合う価値を見いだす人がいなくなるかもしれない。
  • 沈黙を招く人と一緒にいることで「自分までもコミュ力がない人」だと思われる状況を招いてしまい、関わる人から敬遠されてしまうかもしれない。

など、否定的な思い込みが次々と出てしまう。

もちろん、この思い込みが現実のものとならなくとも「コミュ力が無いせいで辛い目に遭う予感がする」と言う予期不安が湧き上がってくることが、沈黙そのものに対する怖さをより強めているのだと考えられます。

沈黙を怖がる心理とコミュ力が尊ばれる時代との関連性

沈黙に対する恐怖心を見ていくに当たったては、コミュニケーション能力が尊ばれる文化・時代背景も無視できないように感じます。

仕事・学業・交友&恋愛関係でいい結果を残すためには、コミュ力はまさに必須のスキルと言えるでしょう。そして、同時にコミュ力がないといくら学歴や美貌があろうとも、上手く社会を渡り歩けなくなってしまう…と感じるぐらいに、コミュ力が無いことに対して、強い負のイメージが付いていると認識している人は多いと感じます。

そんなコミュニケーション能力が大きな価値を持つ社会において、沈黙と言うのはそれだけコミュニケーション能力のなさを露呈することと同じ。

つまり沈黙するorさせることは「自分には低い価値しかないor価値がない」と感じて将来起こるであろうコミュ力がないことで起きる不安をいやでも想像してしまう苦痛がある。

その苦痛をどうにかして避けるためにも、沈黙を避けることに躍起になったり、沈黙そのものをタブー視してしまうのは無理も無いように感じます。

コミュニケーション能力と言えば、大抵の人は話す事をイメージする中、話さないことそのものである沈黙が非常に悪いものだとか、絶対的に良くないものだとみなされてしまうのも、自然なことのように感じます。

しかし、「雄弁は銀、沈黙は金」と言うことわざにもあるように、やたら喋ることよりも沈黙するときに沈黙を貫ける事もまた、喋ること以上に価値のあるという考えもあります。

適切な場面で口を慎むこと、余計なことを言わないよう沈黙することもまたコミュニケーション能力の一種であると考えれば、沈黙そのものに対する過度な恐怖心やタブー視が和らぐのではないかと感じます。

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