他人の承認欲求を否定してしまう心理について

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ネット上の人間関係に限らず、他人が持つ承認欲求を否定することは、今も昔もよくある事だと思います。

  • 過剰な自己アピールや自慢話をする人を恥ずべき人と見なす
  • 目立ちたがり屋な人の身勝手な行動を諌めようとする
  • 自分の価値観を押し付けて承認を求めてくる人のことをやんわりと否定する

など、他人が持つ強い承認欲求を否定すること自体は、SNS全盛の現代に限ったことではなく、昔から行われているものだということは理解できようかと思います。

しかし、他人の承認欲求を否定する行動そのものを見ていると、どこか承認欲求そのものを恥ずべき感情、醜い感情のような絶対悪とみなしている。

そして、他人が持つ承認欲求という醜さを否定することで、自分はそんな醜いものとは無縁な清らかな存在である…と、主張するかのような意味合いを込められているのではないかと感じることもあります。

今回は、そんな他人の承認欲求を否定する心理に関して、お話しいたします。

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「承認欲求=醜い欲求」というレッテル

心理学における承認欲求とは、心理学者のマズローが提唱した欲求段階説で上から2番目にあたる欲求を指します。

シンプルに言えば、他人から自分を認めてもらいたいという欲求であり「褒められたい」「尊敬されたい」「受け入れられたい」「愛されたい」などの、人間関係で湧き上がる自然な感情がこれにあたります。

ただし、他人の承認欲求を否定される場面では、こうした自然と湧き上がる感情のことを否定しているというよりは、

  • 求めてもいないのにしつこく自己アピールや自慢をしてくる場の空気の読めなさ。
  • 自分のことを認めてもらいたいがあまりに、独りよがりな行動を取り周囲を振り回すこと。
  • 認めて欲しいあまりに、話を盛る、過激な行動に出る、他人をディスって自分を持ち上げる、などの悪目立ちしてしまう方法で承認を集める行為そのもの。

などを「承認欲求」という言葉にひっくるめて否定していると分析できます。

また、ひっくるめる過程において、「認めてほしい気持ちが暴走してしまい、トラブルを起こしていること」について否定するのではなく、「認めてほしい気持ち(=承認欲求)」そのものを否定すべき醜い対象とみなしてしまう。

結果として、誰もが持つ承認欲求をまるで忌むべき感情として強く否定する。承認欲求を持つことそのものが、まるで他人に迷惑をかけるもの、罪深いもののように捉えてしまう人を生み出しいているのではないかと思います。

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他人の承認欲求(醜さ)を否定することで、自分は清らかな存在だと主張し承認を集める皮肉

たしかに、強すぎる承認欲求は、ときに周囲の人間と衝突を起こしたり、「認めてよ」という余計なプレッシャーをかけて疲弊させる原因にもなるので、否定すること自体は理にかなっていると言えます。

しかし、承認欲求を絶対的な悪と見なせば、自分が持つ「認めてほしい」という気持ちまでも否定してしまう。そして「認めてほしいけど、認めてほしいとは言えない」という葛藤に苦しむ原因にもなることは、想像に難くありません。

こうした葛藤を解消する手段として、他人の承認欲求を否定するという行為は、たいへんに効果的です。

まず、この意見は承認欲求は恥ずかしいもの、醜く汚いものである、という自分の考えをストレートに反映させており、自分の主張を捻じ曲げることなくスッキリと発言できます。

次に、他人がもつ醜さを正すという大義名分があるため、自分は承認欲求という醜いものとは無縁という立場を取りつつも、同時に自分が普段抱いている認められたい欲求を満たすことが可能です。

最後に、口では「承認欲求は醜いものだから慎むべき」と言いつつ、実際は「『慎むべき』という主張で自分を認めてもらっているのは矛盾では?」という手痛いツッコミに対して、「これは自分の個人的な欲求ではなく、集団の規範、社会や道徳的に見て大事なことだから!」と言い訳説明出来ることです

見てもわかるとおり、「承認欲求は醜いものだから慎むべき」という意見を主張することそのものも、自分の満たされない承認欲求を満たす行動になっています。

しかし、当の本人がそのことを認めれば、「ひどく嫌っている承認欲求という醜さを自分も持っている」と認めることになるので、何とかしてこれを避けようとするのも納得できることでしょう。

防衛機制「投影」から見る他人の承認欲求を否定すること

承認欲求を醜いものとみなして否定する主張をとっているけど、そんな自分にも「認められたい」という欲求があり、葛藤を覚えている。

そんな自分の内面に対して受け入れがたい醜さがあると感じたときに、人間はその醜さを他人に押し付けることで、葛藤から逃れようとすることがあります。

これは、防衛機制の投影と呼ばれるもので、自分が抱いている不都合な感情を、自分ではなく他人が抱いているものとして捉えることで、精神的に楽になろうとするのです。

わかりやすく言えば投影とは責任転嫁であり、自分がもつ醜さ、汚さ、疚しさを他人になすりつけることで、自分はそういった恥ずべきものとは無縁であり、清らかな存在、正しい存在だと自覚(場合によっては他者へのアピールも)できるのです。

なお、投影されるものは、承認欲求のほかにも、

  • 自分が他人に対して嫉妬心を抱いていることに耐え切れず、他人が自分に嫉妬心をいだいていると考える。
  • 自分は結婚をしているが、つい出来心から浮気をしてしまった。しかし、その後ろめたさに耐え切れず、自分のパートナーが密かに浮気をしていると考えたり、パートナー自身が浮気願望があると考えてしまう。
  • つい厳しい物言いで他人を傷つけてしまい罪悪感を覚えるものの、それに耐え切れず厳しい物言いをした人が罪悪感をいだいていると思い込む。そうすることで、自分の罪悪感と向き合わなくても済むと同時に、「罪悪感を感じているのだから、自分が怒るのは当然である」と安心感を得られる。(自責の念による反復増幅仮説に通ずるものもある。)

などがあります。

なお、投影というメカニズムを知ることは、言い換えれば自分が認めたくない感情を受け止めるだけでなく、それを他人になすりつけているという、更に認めたくないことを認める苦痛を伴う作業でもあります。

他人が持つ承認欲求とどう付き合うべきか

他人が持つ承認欲求を否定することは、上述したように自分が持つ承認欲求を否定してしまうことで葛藤したり、自分で自分を騙すかのような考え方を持つことを招きかねません。

しかし、かと言って承認欲求を全肯定する…という考えは、さすがに行き過ぎているのではないかとも感じます。

下手に承認欲求の存在そのものを無条件に認めた結果、他人を振り回す人や炎上必至な行動を起こす人の背中を(悪い意味で)押してしまう懸念がある。言うなれば、他人をおだてた結果として酷い目に合わせたり、自分の無責任な承認が仇となり他人の人生を破滅へと導くようなことになるので、そんな事態にならないように避けたいと思う気持ちは大事にしたいものです。

こうしたことを踏まえて、他人の承認欲求について言えることは

  • 承認欲求は誰もが持っている自然な欲求であると受け取る。
  • 承認欲求の強弱には個人差があるとを理解する。
  • 暴走した承認欲求は自分も他人もひどく傷つくおそれがあるとを理解する。
  • 暴走した承認欲求に対して、無批判に肯定せず、そして頭ごなしに否定せず、過度な承認欲求がどのようなリスクを伴うのかを落ち着いて説明する。
  • 説明するときは、なるべく承認欲求という相手の性格や人格の根幹を成すものを否定するのではなく、行動に限定して説明することに徹する。(=人格否定ではなく、行動に対する提言を取る。)

…という、方法をとることが大事だと思います。

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