自分自身を肯定する「自己肯定感」は、ストレスにうまく対処したり、悩みや困難を突破するためにはあっては困らないものであると考えている人は多くいます。
メンタルを強くしたいと考える人だと、何かしら本やネットで調べると、この「自己肯定感」というキーワードをどこかで目にした方もおられると思います。
ありのままの自分を存在や感情、気持ちや心理などを肯定する事は、ストレス社会を生き抜くのに役に立ちますが、しかし自己肯定感が強すぎて他人に迷惑をかけてしまう、周囲とトラブルを起こしてしまうということも世の中には存在しています。
今回は、自己肯定感が強すぎることによるトラブルについて、おはなしさせて頂きます。
自己肯定感が強すぎることで起きる人間関係のトラブル
自分のことを肯定的に見てくれる人とだけ付き合うようになる
自己肯定感が強すぎるには、自分のことを「すごい」と褒めたり、「素晴らしい」と賞賛の言葉を述べたり、「いい人だ」と尊敬する…という具合に、自分を肯定的に見てくれる人とのみ付き合ってしまう事があります。
その結果、自分に対して少しでも否定的な意見を言ったり、「ちょっとここを直した方がいいのでは」というような建設的な意見を言ってくれる人に対して過剰反応して、相手を罵る、自分は絶対に間違っていないと意固地になってしまう事があります。
自分のことを肯定的に見てくれる人とばかり付き合うのは確かに心地のいいことですが、その空気に甘んじていると馴れ合いや気の緩み、甘えを生んでしまうことになります。
これが仕事や部活となると、目標達成に向けて気を引き締めるべきときなのに真剣に目の前の仕事(or練習)に打ち込めないだけでなく、「別に打ち込めなくてもいいや」という一種の諦めに繋がる事があります。
もちろん、自分に対して否定的な意見を投げつけたり、嫌味や非難を言ってくる人と一緒にいると喧嘩やストレスの元になるので、否定的な見方をしてくる人と無理に付き合うべきというわけではありません。
しかし、痛いところをついてくる人を意図的に退けて、馴れ合いに甘んじていれば、自分の目標が達成できなくなるのも無理はありません。自分と同じかそれ以下の人ばかりと付き合い、常に自分がトップになれる環境に甘んじるのは避けるべきでしょう。
自分が反省すべき時に反省できず同じミスを繰り返す
自己肯定感が高すぎると、自分が招いたミスを繰り返さないように反省すべき状況ですら、「こんなダメな自分でも気にしなければええやん」と反省しようとしない事があります。
言い換えればふてぶてしく開き直って、自分の非を認めようとしない人になってしまいます。
自分の行動に落ち度があったのであれば素直に「ごめんなさい」「すみませんでした」と認めて、再発防止に向けて考えていくことが肝心ですが、それすらしないためにに、周囲から信用されなくなり孤立するようになります。
また、反省すべき状況で開き直るのではなく嘘をついて誰かに責任を擦りつけたり、自分は悪くないと居直るケースもあります。
こちらも同様に反省から何も学ばず同じ過ちを繰り返すだけでなく、人から信用を失う原因になってしまいます。
自己肯定感が強すぎると「常に自分は正しい」という気持ちに振り回され、「正しい自分」でいられなくなる状況でボロを出すようになってしまいます。
その結果として謝りたくても謝れない「謝ったら死ぬ病」になり、自分で自分の首を絞めてしまうことになるリスクもあります。
なお、謝ったら死ぬ病については「謝りたくても謝れない「謝ったら死ぬ病」を治すための考え方」で詳しく解説していますので是非ご覧下さい。
自己肯定感を高めるために誰かを否定したり、敵視するようになる。
誰かと比較した上で自分は優れている、自分は素晴らしいと自分を肯定している人は、無意識のうちに自分を肯定するために誰かを否定し、敵視してしまっています。
例えば「自分は仕事ができる」と純粋に言うよりも、「自分はただ何も考えずに仕事をしている人よりも仕事ができる」と言うと嫌味っぽく聞こえてしまいますよね。
他にも
- オタクだけど恋人がいる。
- 体育会系よりも運動ができる。
- 学歴はないけど、大卒の人よりも賢い。
というような言葉は、無意識のうちに自分を肯定するために、オタク、体育会系、大卒の人を否定していることになります。
何かにつけて誰かを否定した上で自分を持ち上げるような言動を繰り返すと、扱いづらい人、自慢ばかりでつまらない人と煙たがられてしまうよう事があります。
他人の意見を聞こうとせず、傲慢な態度を取る
自分は正しいと信じて疑わず、自分に対するアドバイスですら自分へのディスりや攻撃と捉えてしまい、「俺に対して楯突く人だ」と傲慢な態度を取ってしまう事があります。
しかし、自己肯定感の強さの割に中身は繊細で傷つきやすく、傷つくのを避けるために更に自己肯定感を高めてネガティブなものを必死に見ないようにする、抑圧しすぎて自分にとって都合のいい話ばかりに反応して付け上がってしまうことがあります。
プライドの高さの割に繊細な内面を持ってしまう心理については、以前書いた「プライドは高いのに繊細で傷つきやすい人の特徴と心理」で、詳しく解説していますので是非ご覧下さい。
本当は自己肯定感が低いのに自己肯定感があるように装っているケースも
自己肯定感が強すぎる人について書いてきましたが、中には本当は自己肯定感が弱く誰かを傷つけてでも自分を肯定しなければストレスで潰れてしまうというような過去を送ってきたという人も多く見かけます。
また、スポーツの勉強のように誰かと比較する場面がある、競争社会の側面がある分野では、順位や成績が自己肯定感の根拠となることもあります。
しかし、誰かや何かを否定したり、比較した上で自分を肯定してばかりではキリがありません。自分よりも上の人も下の人がいるのは仕方のないことだと理解した上で、誰かと比較せずとも自分を肯定できる、認められるようにしていくことが大切です。
また、自己肯定感を身につけるときは、自分の良いところはしっかり認め、自分の悪いところは正していくように心がけることも大切です。
自己肯定感とは自分の良い所ばかりを見て、悪いところは蓋をして徹底的に見ないようにすることではありません。
歪んだ自己肯定感のせいで、仕事や部活で誰かを困らせてしまっていたら、適宜反省して正していけるようになりましょう。
自己肯定感をSNSで身に着けようとするのは要注意
自己肯定感を身に付けるためにSNSで何かを呟くという方法はオススメしません。
SNSで何かを呟くと、フォロワーが増えたり「いいね」などの数字に見える反応があるので、その数字が増えることで、自分は認められているという実感が湧きます。
しかし、SNSでは過激な言葉や極端な意見が支持されたり、誰か一人の有名人がRTなどでつぶやきを広げることで、急速に意見が拡散されるという事が起こるので、気分の浮き沈みが激しくストレスを抱えがちです。
また、いわゆる「炎上」するつぶやきには、自分が正しい、自分は間違っていないと肯定するために、あえて周囲に敵を作って過激な言葉を発信している人をSNSでよく見かけます。
例えば「今の時代にサラリーマンなんかとっとやめて、好きなことを仕事にするべきだ!」とつぶやいているフリーランスの人をtwitterで一度は目にした人もいると思いますが、この言葉は「雇われの身であるサラリーマン人と違って、自分はフリーランスで生計を立てている優秀な人間だ!」と主張し、自分を肯定していると見ることもできます。
しかし、このように職業など他人を一括りにして自分を肯定することを続けていけば、当然ながらサラリーマンとして派手ではないけど立派に働いている人から反感を買うことにつながります。
また、そのフリーランスの人に対して仕事を頼もうと思っていた会社員の方が、自分をけなすようなつぶやきを見つけてしまったら、仕事を取り下げるということも考えられます。
SNSでフォロワーが多くいて、いいねなどの反応が多く貰える立場にいる人ほど、自分の発する言葉に気を遣っているものです。
しかし、フォロワーの数に限らず煽るような言葉や過激な発言を続けると信用を失うということを覚えておきましょう。