自分で自分にハンデをかけてあえて不利な状況を作ることで、相対的に普段の自分をよく見せたり、失敗した時の言い訳を用意してショックを和らげようとすること…つまり、セルフハンディキャッピングは、恋愛の場面でも応用可能な心理テクの一つです。
しかし、そもそもが自分を不利な状況に追い込む、つまり、自分の見た目や人間としての魅力を下げているために、必ずいい効果が出るとは言えない。むしろ、あざとすぎて煙たがれたり、あざといのに引っかかるような人ばかりが集まる事態に陥る可能性もあります。
今回は、そんな一長一短がある恋愛におけるセルフハンディキャッピングについてお話いたします。
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恋愛でのセルフハンディキャッピングの例
自虐ネタを用いて自分への期待値をあえて下げようとする
自己紹介の時に
- 普通にコミュ力があるのに「自分はコミュ障で…」と自称する。
- 普通の容姿なのに「自分はブサイク(or地味)で…」と自称する。
など、自分の魅力を下げるような特徴を自虐ネタとして利用して、相手が持つ自分への期待値を下げるように誘導する。
これにより、普通程度の魅力しか持っていなくても、期待値が下がったことにより相手が「コミュ障なのに普通にコミュ力がある」「ブサイクって言ってたけど普通に可愛い」と、自分のことを実物以上に過大評価し、好印象を残す事ができます。
普通程度の魅力しかない人からすれば、自分のことが何も印象に残らなければ恋愛にこぎつけないのは明白。しかし、かと言って他人を引き立て役にするわけにもいかないし、でも自分の魅力を今以上のものにするのは面倒だけど、よく見られたい願いは叶えたいという時に役立つのが、セルフハンディキャッピングというわけです。
(なお、この現象は、不良学生が普通に礼儀正しくしてくるだけで、その人のことを過大評価してしまうあるあるネタにも通ずるものでもあります)
恋愛できない理由として予防線を張る言動が多い
恋愛に対して消極的な人もセルフハンディキャッピングをすることがあります。そのいい例が、予防線を張ることです。
- 恋愛できないorしないことを他人からツッコまれないための言い訳を用意して理論武装しておく。
- 恋愛よりも大事なこと(趣味・仕事・友達関係…など)を作っておいて、恋愛をしないアリバイを作りたがる。
- やたら自己卑下をしたり、恋愛とは無縁なキャラを演じたりして、他人から恋愛対象として見られないように振舞う。
など、予防線を張ってアピールをしておく。そのアピール通りに、恋愛できない結果になれば「まぁ、あれだけアピールしたから恋愛できなくても当然だよね」と自分で自分をスムーズに納得させることが出来ます。
また、もし万が一にでも、恋人ができたとしたら「これだけ、アピールしてきたのに恋人ができたなんて意外!」という類の高評価を得ると同時に、意外性という新たな魅力を獲得することができます。
なお、ここまで予防線を張る理由として考えられるのは、恋愛というお互いの内面をさらけ出す関係において、自分が否定されて自尊心と自己愛が傷つく恐怖を敏感に察知している。そして、その恐怖が現実のものとならないように、恋愛しなくてもいい状況や恋愛から逃げる口実を入念に作っているのだと考えられます。
また、中高生のように同世代の恋愛事情に関して興味津々な人たちが多く集まる集団内において、恋人がいることで悪目立ちをしたり、「恋愛への意欲が強い=節操がない人、品が無い人、卑しい人」と思われないための防衛策であると考えられます。
やたら無謀な恋愛に挑もうとする人
あえて失敗してもおかしくない状況に身を置くという意味では、やたら無謀な恋愛に挑もうとしている人も、セルフハンディキャッピングのいい例です。
- 玉の輿(逆玉含む)狙いで極端に良い条件の人以外は眼中にない人。
- 婚活で相手に対する要求水準が現実離れしすぎている人。
- 日本国内ではなく海外に自分の理想の恋人がいると信じて疑わない人。
など、やたらハードルの高い恋愛を夢見ているものの、結局恋愛にこぎつけていない人は、失敗しても自分が傷つかないような言い訳を用意しているようにみえます。
玉の輿恋愛が無理なら「不景気のせい」にして自分を守れる。要求水準が高すぎる場合は「要求にかなう人を呼べない運営に問題がある」と言い訳をして、自分の水準が高すぎること現実を直視せずに済む。
国際恋愛を望むのも「日本には自分に合う相手がいない」という自分が傷つかないと同時に、もっともらしい理由をつくって、自分の恋愛観を変えなくても済むことに躍起になっていると分析できます。
もちろん、自分以外の誰かや何かにある程度原因があることは認めますが、それらに自分の恋愛が上手くいかない理由を全て押し付けて、自分の理想を修正するという自己否定を伴う作業の苦痛から逃げているとも解釈できます。
恋愛におけるセルフハンディキャッピングの効果
自虐ネタなどであえて自分の期待値を下げさせておき、普通の自分でも普通以上によく見せられるため、自分を磨くための面倒な努力はしたくないけど、好印象だけは残しておきたいという(人間らしい欲がある)人からすれば、セルフハンディキャッピングは効果的です。
もし仮に、恋愛までこぎつけなかったとしても、「自分の人格が否定されたのではなく、あくまでも自虐ネタが否定されただけ」と解釈して、その時感じた辛さを和らげられます。
恋愛は相手があってこそ成り立つものであり、上手くいくかどうかを自分一人の力量だけでは完全にコントロールできません。だからこそ、もしも上手くいかなかったときの衝撃に自分が押しつぶされないための策を事前に用意しておきた願望がある人から見れば、セルフハンディキャッピングはまさに優れた心理学のテクかもしれません。(なお、これが本当に自分のためになるかどうかは甚だ疑問だが…)
ただし、セルフハンディキャッピングは万能でない
失敗したら衝撃を和らげ、上手くいけば意外性という新たな魅力を獲得できる…これだけを見ればセルフハンディキャッピングはどっちに転んでもおいしい、万能の心理学テクにのように思えるかもしれませんが、現実はそうとも言えません。
まず、言い訳から入る逃げ腰の姿勢により、恋愛だけでなく友達や仕事仲間としても付き合うのが面倒な人だと見られてしまう懸念があります。
口を開けば自虐ネタ、言い訳、釈然としない態度ばかりで、正々堂々とした潔さが見られないので他人からの信用を獲得しづらく、恋愛はおろか普通に他人と上手く関わることそのものがハードモードになりがちです。
また、失敗したときのショックを和らげる効果は魅力的かもしませんが、そもそも失敗する根本の理由…つまり、言い訳や自虐ネタから入る姿勢や、現実離れした自分の恋愛観・理想像など、恋愛が上手くいかない根本的な原因から目を背け続け、反省も改善もできない状態のまま、恋愛できない状況を長引かせてしまい、ますます自分を不利な状況に追い込むリスクがあります。
なお、本当は恋愛にうんざりしてきたと感じている人からすれば、自分から白旗を上げずに恋愛が絶望的な状況になり、成り行きに任せて「恋愛はもう諦めてもいいよね」と言える状況に自分を追い込めれば、それはそれで本望かもしれません。
しかし、本当に恋愛をしたくてたまらない人からすれば、動けば動くほど自分の恋愛環境が悪くなるという先行きの不透明さに苦しむハメになりかねないので、セルフハンディキャッピングは決して万能とは言えないのです。
そもそも自分自身(セルフ)にハンデをかけているわけなので「メリットしかない」という解釈は、どうあがいてもできません。
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