自己愛性パーソナリティ障害の人は、持ち前の自己中心的な考えの強さゆえに、自分の言うことをなんでも聞きそうな相手を求めては、その人に要求を押し付けて自分の手足のように使うという、はた迷惑極まりない行動を取ることがあります。
自己愛の強い人の手足候補としてターゲットにされ、いいように使われてしまったり、敵視されて陰湿な嫌がらせを受けてしまう…こうした一連の行動を、ネット上ではターゲットの言葉を略して「タゲる」「タゲられる」と表現することもあります。
当然ながら自己愛の強い人のターゲットになる側からすれば、自分の貴重な時間や労力を搾取されたり、いわれなき嫌がらせを受けるハメになるため、面倒くさいことこの上ない。自己愛の強い人にタゲられずに、平穏な生活を送った方が精神衛生上好ましいことは、言うまでもありません。
では、具体的にどのようにして自己愛の強い人にターゲット認定されずに済むのか…今回はこのテーマについてお話いたします。
ターゲットにならないための基本は「距離を置く」こと
まず始めに、自己愛の強い人のターゲット候補として見られないためには、相手と深く関わろうとせず距離をおくことが基本です。
相手との関係を解消する、あるいは関わる時間や頻度を減らす。ネット(SNS)で繋がっているのなら相手をブロックorミュートする、アカウントを削除したりグループを退会するなどして、連絡が取れない状況にすれば、自己愛の強い人に巻き込まれる状況を未然に防げます。
無理に「あなたのことが嫌いだから関わらないで欲しい」などのキツい言葉を主張して、波風を立てるような真似は避けたい人にとっては、距離を置くという対処法はまさに好都合と言えます。
「距離を置く」以外の対処法について
ただし、「距離を置く」方法が自己愛の強い人全員に通用するとは限りません。
もとより、自己中心的な考えの強さ故に、自己愛の強い人は他人の視点に立って物事を考えることを苦手としている。そもそも自分が周囲から距離を取られていることに気付けない。気付けないからこそ図々しい行動に出れてしまう…という厚顔無恥な側面を持っている人とも言えます。
また、相手との関係性によっては、簡単に距離を置くに置けない事態に陥り、別の対処法を練らなければならないこともあります。
部活動の先輩や、仕事の人間関係(とくにクライアント)など、都合上距離を置くわけにはいかないし、仮に距離を置こうものなら集団内における自分の立場が悪化する危険性が考えられることもあるからこそ、以下で紹介する方法で柔軟に対処していくことも大事です。
相手を褒めすぎない、おだてすぎない
自己愛の強い人は、自分のことを褒めてくれる人、理由もなくチヤホヤして特別扱いしてくれる人を強く求める傾向があります。
褒めること自体は人間関係を渡り歩くための基本中の基本という認識が強い。また、下手に貶したり苦言を呈するよりはリスクが少なく、且つ自己愛の強い人が強く求めていることもあってか「自己愛が強い人はとにかく褒めるべき」という方法を紹介している書籍やネット上の情報もあります。
自己愛の強い人を褒めておけば変に波風立てずに済むのはその通りですが、一方で「なんでも褒めてくれるから自分にとって都合がいい人」と格下に見られてしまい、知らないうちにぞんざいな扱いを受けてしまうこともあります。
また、褒めすぎたことで相手が増長したり、勘違いを起こしたために面倒事に巻き込まれるリスクもあります。
そのため、褒める時はどんな時でも褒めるのではなく、ある一定のルールを設けておくことだ大事です。
- 自分が所属している組織の利益に関わることだけ褒める。
- 本当に褒めたいと思った時だけ褒める。
- 無理に心にもないお世辞は言わない。
など、無理のない範囲で褒めておく時のルールを作っておくことで、自己愛の強い人を含めた周囲の人から見て「なんでもいうことを聞く人ではない」という印象が自分に定着するように振舞うのです。
基本的に褒めるときは褒めるが、褒めない場面では罵倒、嫌味、失笑など相手の自尊心を傷つけるような行動は取らないこと。褒めてはいるが、決して不快感・敵意を顔や行動に出しているわけではないために、自己愛の強い人から敵視されにくく、且つ手足にはしにくい相手というちょうどいいポジションを獲得しやすくなります。
嫉妬されそうな話題は口にしないようにする
自己愛の強い人は、自分が一番優れているだとか、自分が一番注目を浴びているだとか…やたら「自分が集団内において一番秀でてなければ気が済まない!」という考えの強さが見られます。
そのため、下手に自己愛の強い人よりも自分が優れているだとか、恵まれた環境にいることをアピールしようものなら、強い嫉妬心を抱くと同時に、引きずり下ろそうとして陰湿な嫌がらせに出てしまうことがあります。
こうした事態を防ぐためにも、自己愛の強い人の前では相手が嫉妬しそうな話題は極力口にしないことが肝心です。
なお、嫉妬しそうな話題を口にしないからといって、自己卑下をしたり、過度にへりくだることまでする必要性はありません。(むしろ、下手にヘコヘコしては、自己愛の強い人の手足になりかねないので避けるのが賢明)
対抗心や競争意識を持たないようにする
自己愛の強い人が友達、同級生、部下、同僚など、自分と同じあるいは立場が下の人の中にいる場合に気を付けておきたいのが、下手に対抗心や競争意識を燃やして張り合おうとしないことです。
上でも触れたように、自己愛の強い人は自分が一番であることを強く求めるために、仕事・勉強・スポーツにおいて、やたらと張り合う傾向があります。
ただ爽やかに張り合うならまだしも、一番になるためなら手段を選ばないといわんばかりに、競争相手を悪者扱いして集団から孤立させようとしたり、挑発、嘲笑、悪評を広める…など、陰湿な嫌がらせをしてまで、陥れようとすることがあります。
こうした事態にならないためにも、下手に対抗心を持とうとせず、相手かどう出てこようと気に止めない姿勢を持つことが大事です。
全ての要求を受け入れないようにする
自己愛の強い人は図々しい態度を取り、周囲の人は自分の無茶な要求を受け入れるし、ちゃんと要求通りに動いてくれる…という、自己中心的な考えを持っていることがあります。
また、自己愛の強い人の要求を聞き入れたとしても、見返りは期待できない。あったとしても大したものではなく、付き合えば付き合うほど、自分ばかりが損をしている気がする…という、不毛な関係に陥ることがあります。
ただし、部活の先輩、職場の上司やクライアントのように、立場上要求を断ることが難しい関係だと、多少理不尽な思いするのは承知の上で、要求を受け入れなければいけないこともあるものです。
もちろん、この状況を全て受け入れて泣き寝入りすることだけは避けなければいけませんので、要求をなんでもかんでもハイハイと受け入れないラインを設けておく。そして、相手が付け上がって図々しくもその一線を超えてきた場合は、断固として拒否するように心がけましょう。
なお、受け入れないラインの設定は、自己愛の強い人以外に賛同を得られるもの、社会通念や道徳、法律に照らし合わせて問題ないものにしておくのが目安です。
丁寧に接してきても油断しないようにする
自己愛の強い人が図々しいと言っても、他人に要求するときにはそれなりに優しくなったり、相手の良心に訴えかけるよう丁寧にお願いをすることもあります。
これによって、自分の要求を自然と受け入れてもらえる状況を作り出す。ただし、優しく振舞いつつも、無茶な要求やえげつない要求を飲み込ませようとするため注意が必要です。
表面的には優しい態度でお願いしているので、「断るのはなんだか忍びない…」と良心の呵責を感じることもあるために、このケースは非常に厄介です。
ですので、たとえ自己愛の強い人が丁寧に接してきたとしても、その丁寧さに心を打たれてお情けで相手の要求を受け入れてしまわないことが大事。
受け入れてしまったら最後、付け上がって何度もお願い渡渉して無茶な要求を投げつけてくる。そして、難色を示そうものなら「あの時は受け入れてくれたのに」と過去の事例を持ち出して訴えかけたり、ゆすりたかりを働きかねない。
優しく接してくるからと言って、その場の雰囲気に流されないよう気をつけることが大事です。
自己愛の強い人のターゲットにされないためには、自分の性格・気質を知ることも大事
最後に、自己愛の強い人は「この人はターゲットにしにくいorこの人ならターゲットにしやすい」と、その人の性格や気質を見極めている。その上で、ターゲットにできそうな人を選ぶだけの人を見る目は持ち合わせているものです。
だからこそ、自己愛の強い人が身近なところにいる、あるいは自己愛の強い人と既に関わりを持っていることを感じている人は、自身の性格・気質がターゲットにされやすいものであるか否かをよく知っておくことが大事と言えます。
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