デートDVとは、恋人間で行われるDV(ドメスティックバイオレンス)を指す言葉です。
一般的にDVといえば、夫婦間で行われる暴力や暴言、態度による暴力などを指す言葉ですが、最近では夫婦に限らず恋人関係、それも未成年者の間でも見られており社会問題になっています。
近年では、若者(とくに学生)に向けて啓発活動が各地で行われており、早ければ小学生向けにデートDVに関する講義が行われている例もあります。
では、デートDVが起きる原因や背景は一体どういったものがあるのか…今回は、このテーマに関する考察を話いたします。
デートDVの原因として考えられること
若すぎてDVに関する知識が乏しい
一般的に「DV=夫婦間できるもの」という認識があることから、中高生のように夫婦の立場で物事を考える必要性がまずない若者にとっては、DVに関する知識に触れる機会が無い。
機会が無いので、
- どういう行動がDVに当たるのか
- DVにはどんな種類があるのか
- DVを受けたら誰に相談すればいいのか
という知識を、デートDVの加害者も被害者も双方とも知識として学んでいない事が影響して、お互いがお互いに無自覚のうちにデートDVの当事者となってしまうのです。(なお、最近でこそ、生徒にデートDVの啓発を行う学校が出てきており、知識に触れる機会は整っているとも見れる)
また、余談ですが「DV防止法(当時は配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)」が施工されたのは2001年と、割と歴史は浅め。
デートDVの教育を受ける子供の両親世代、祖父母世代が、DVに関する知識を若い頃に学ぶことがないまま大人になっていることも、DVに対する疎さを招いているのと見ることもできます。
(無論、かつては家父長制、亭主関白orかかあ天下など、現代の基準に照らし合わせればDVと判断できるものがあるでしょう。しかし、それらが今の基準で言えばDVに当たる可能性があり、問題のある行為だと認識できないことが、DV問題の根深さでもあります。)
加害者および被害者の自覚の乏しさ
一般的なDVに関する知識が乏しいことからの続きですが「自分たちの関係は(デート)DVではなく、普通の関係である」と思い込んでしまうことが、デートDVが起こってしまう原因と考えられます。
デートDVといっても、初めから暴力や暴言など、明らかに「これはおかしい」と加害者・被害者ともに自覚しやすい行動に出るわけではありません。
ヤキモチを焼く、わがままを言ってしまう、プライベートを知って深い仲になりたがる、束縛したがる…と、どれも恋人関係ならよくあることが、デートDVの発端となってしまう。
そして、恋人ならよくあることの延長線上として暴力・暴言など乱暴な行為に発展したとしても「これもよくある事なのかも」と考えてしまいことで、デートDVが起きていると自覚しづらい。これこそが、デートDVの厄介な点です。
加害者・被害者ともに家族から暴力・暴言を受けてきた過去が影響している
一般的なDVや虐待、モラハラやパワハラのケースでよく見られるのが、被害者・加害者ともに、家族から何かしらの身体的・精神的暴力を受けてきた過去を持っているというケースです。
普段から乱暴な態度をとることが、人間関係のコミュニケーションの一種であり、日常的な光景であると学習してきた過去を持つからこそ、
- 加害者側は他人に乱暴な態度をとることの異常性に気付けない。
- 被害者側は他人から乱暴な態度をされることの異常性に気付けない。
と、どちらも乱暴な態度が行われることを問題であると見なせず、気が付けばデートDVが起きてしまっていた…ということになるのです。
被害者・加害者も、暴力が身近にある環境で育ってきたために、自分が今まさにデートDVに巻き込まれている事実に気づけないし、問題意識も抱けない。恋愛関係において、暴言や暴力は当然起きるものであり、それに対して異を唱えたり、誰かに助けを求めるべきだという考えすら持つにいたらないのです。
「せっかく恋人になれたのだから別れたくない」という気持ちの影響
デートDVが主に若者の間で起きている背景には「せっかく恋人になれたのだから別れたくない」という気持ちが災いし、辛くしんどい恋人関係を切るに切れず、デートDVを招いているとも考えられます。
別れたくないという心理の裏には、失恋の辛さに向き合うことの恐怖や不安だけでなく、「○○と△△が別れた!」と噂になって広められてしまうこと悪い意味で有名になってしまうことへの恐怖も考えられます。
とくに、後述するように今やSNSがあたり前で、「誰と誰とが付き合ったor別れた」というゴシップ的な情報は、瞬く間に拡散されてしまう恐ろしい世の中でもあります。
また、単に噂がすぐに広まりやすく、それに事実を逸脱した誇張や都合の良い憶測が入った上で、面白半分で簡単に拡散されてしまう怖さもあるからこそ「別れたという事実を作りたくない」と考える人も少なくないと感じます。
他人に相談しづらい内容が含まれていること
一般的なDVでも同じですが、恋愛関係において自分が嫌がらせ受けていることを他人に相談することは、言い換えれば自分が秘密にしておきたいと感じる恥ずかしい話を、第三者に知らせることで精神的な苦痛を味わう辛さがあります。
相談する相手によっては、笑いのネタとして広められてしまい、自分の恥を多くの人に晒してしまわれる不安ある。
それこそ、苦い初恋や若さゆえの過ちのように、自分の人生の汚点(=黒歴史)になるかもしれない恥ずかしい話題だからこそ、たとえ乱暴な扱いを受けていても相談する気は起きにくい。
その結果、デートDVを初期の軽い段階で防ぐことができず、非常に辛く重い関係に至らしめるまでに悪化させてしまうのだと考えられます。
スマホの普及とデートDVの関連性
デートDVに関するニュースや啓発用の動画を見ていてよく登場するのが
- SNSでの既読無視に関する過度な追求。
- スマホのカメラを使ってプライベートな写真を送るように強制する。
- 恋人のスマホを勝手に除こうとする。
- SNSアカウントを調べて交友関係に干渉する。
など、スマホが関連する事例です。(もちろん、ガラケー(=元祖携帯電話)の場合でも、上の事例は可能である)
今や学校や登下校のときだけ恋人と会ったり、直接会えない時は黒電話や文通等で恋人に連絡をかける…という情緒はあるが古臭い時代ではなく、スマホさえあればいつでもどこでも恋人と簡単に連絡が取れる時代です。
つまり、スマホの登場によって恋人と同じ時間を過ごすことが容易になった分、恋人関係で起きる束縛浴や独占欲を妨げる要素が減ったことで、過度に距離感を近づけすぎた結果、デートDVという社会問題を生み出しているとも考えられます。
LINEの既読機能のように、今やスマホを使えば恋人がいつどこで何をしているか…という、かなり込み入ったプライベートな情報まで、その気になれば詮索可能で、ストーカーじみたことができてしまう時代に生きている…と理解しておくことが、自分がデートの加害者・被害者にならないためにも大事であると感じます。
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