年を取るとよくあるのが素直に他人に「ごめんなさい」「すみませんでした」と言えなくなってしまう人がいます。
自分が何か過ちやミスをしてしまったときは素直に謝るのが良い人間関係のためには必要ですが、頑固な性格であったり、自分に自信がない場合は、素直に謝らないという行動を取ってしまう事もあります。
こういう謝らないといけない時に「謝らない」「謝れない」人たちのことを、ネットでは「謝ったら死ぬ病」と呼んでおり、この病で苦しんでいる人や苦しめられている人がいます。
今回は「謝ったら死ぬ病」の特徴や、この病気や言葉が生まれてくる背景についてまとめていきます。
「謝ったら死ぬ病」とは
最初に申し上げますが「謝ったら死ぬ病」とは、あくまでもネット上で名づけられた謝れない人たちを指す言葉でしかなく、うつ病や神経症のようなメンタルの病気の正式な病名ではありません。
「謝ったら死ぬ病」とは、文字通り「ごめんなさい」「すみませんでした」が言えない、つまり謝罪する事ができなくなっている人を指す言葉です。
一般的に、学生よりも社会人、若者よりも中高年、高齢者に多く見られる傾向があります。しかし、年齢や立場に関係なく、環境や考え方次第では若者であっても「謝ったら死ぬ病」になる可能性もあります。
「謝ったら死ぬ病」になりやすい心理や性格
社会的な地位がある、上下関係で上の立場の人
社会人のように仕事の経歴を積んで役職や地位を持つと、人に謝るよりも謝られる事の方が多くなり、謝る場面が少ないためにどうやって謝ったらいいのかわからなくなっているという説があります。
とくに、人よりも上の立場に立っていると「謝罪をする=今の自分の立場を失う」と考えてしまう場合が多く、なんとかして自分の優位な立場を守ろうと、必死に謝らない理由を探したり、ごまかしてうやむやにしようとしてしまいます。
また、「教師と生徒」「上司と部下」「先輩と後輩」のように上下関係がはっきりしている場合、上の立場にいるというだけで、下の立場にいる人に謝ることをためらう人もいます。
これも、謝ることで自分の立場が落ちてしまうという恐怖感を無意識のうちに感じているので、無意識のうち謝罪から逃げてしまう行動を取ってしまいます。
正義感が強すぎる、間違った自己肯定感が強すぎる人
また、正義感が強すぎる人や間違った自己肯定感を身につけてしまっている人も謝れない傾向があります。「自分は常に正しい、間違っているのは常に相手の方だ」という思い込みが強くなればなるほど、自分の非を認めて素直に謝罪するのは難しくなりますね。
正義感が強い事は素晴らしいことですが、正義感が自分の非を認めないための屁理屈になってしまうと自分も苦しくなるだけです。
このサイトでも度々でている「自己肯定感」という言葉ですが、正しい自己肯定感とは他人と比較することで身につけたり、他人を悪と見なし自分は正しいと考えることではありません。
他人と比較せず「自分はそのままでいいんだ」という肯定する事が正しい自己肯定感です。
「謝罪=自信が奪われる、自己否定の場」と考えている人
謝罪をする場面は自信を付ける場面というよりも、自信を奪われる場面。自分を肯定する場面というよりも、自分を否定される場面なのはいうまでもありません。
そんな自信を奪われる、自分を否定される場面を、喜んで受け入れるような人は多くありません。できれば誰かを傷つけて謝るようなことは避けたいのが普通です。
しかし、そうは思っていても自分が何か過ちをしてしまったときは、素直に自分の非を認めることが良い人間関係のためには必要です。しっかりと謝罪をして反省点を見つけて改善して行かなければ、また同じ過ちを繰り返し相手や自分を傷つけてしまう、誰かに迷惑をかけてしまうばかりです。
また、不倫や交通事故のような不祥事を起こした芸能人が、記者会見で涙を浮かべながら「この度は多大なご迷惑をおかけして、心から申し訳なく…」とお詫びの言葉を述べているシーンがニュースではよくありますね。
このように謝罪している人を大勢の人が囲んでさらし者にしているを見て、無意識のうちに「謝罪=とても悪いこと」と思い込んでしまい、ますます謝罪をできなくなってしまうケースもあります。
繊細で傷つきやすい性格の人
人の感情や自分にせまる危険、不快感に敏感な繊細な人、謝罪の場面で何か攻撃される、否定されることで強く傷ついてしまう人は、謝罪することをなんとかして避けようとします。
「謝罪=危険、不快」と考えているので、そんなに大したミスではなくても、謝罪をすることで自分がひどく傷つくことを恐れてしまい、結果として「ごめんなさい」が言えない人になってしまいます。
ちょっとしたミスなら「あ、ごめん」と気軽に言えば大きな問題になりませんが、繊細すぎてそれすらできないので、周囲からは「なんだか気が利かない人」「気配りができない人」「他人の気持ちを考えようとしていない人」と思われてしまいがち。
でも、本人からすれば十分すぎるほど他人の気持ちを察知している。でも、傷付くのがこわいから、なかなか謝罪ができないというとてもしんどい状態で、ストレスを抱えているのです。
このタイプの人は、自信をつけるなり、過ちと自分の人格とを切り離して考えることが、素直に謝って豊かな人間関係を築くためには効果的です。
プライドが高すぎる、人を見下す癖のある人
自分は周囲から尊敬されるような存在だと考えるようなプライドが高すぎる人は、自分の身の丈に合わないプライドが崩れるような「謝罪」という行為がしにくくなります。
自分の身の丈にあったプライドであれば、「謝罪」をしただけでは、自信がガクっと崩れる事はありませんが、高すぎるプライドはそれだけ不安定な精神状態を招き、維持するだけでもストレスや苦痛を伴います。
また、プライドが高すぎる人にもよくある「他人を見下す」癖のある人も、当然ながら自分よりも格下(と自分が思い込んでいるだけ)の相手に、謝罪をする事は、相手と同列になることに等しいので、それを避けるべく謝罪をしない、先延ばしにするという行動を取ってしまいます。
「謝らせて死なせたい病」の人たちも無視できない
相手が謝罪しているのに、「誠意が見られない」「反省の様子がない」と決め付け、謝罪を腹の底から謝っているものだと思おうとしていない人がいるのもまた事実です。
謝っている人を認めない人が多数いることが、謝ったら死ぬ病を生む原因になっていると考えられます。謝ったら死ぬ病に対して「謝らせて死なせたい病」「謝らせて殺す病」という言葉がネットやSNSで目撃されています。
謝らせて死なせたい病の人は、正義感が強い、真面目である、善悪に厳しいといった特徴があります。
しかし、正義感が強いからといって、謝ってしっかり反省している人に対し執拗に攻撃を加ええて精神的に参らせるようなことは、相手にも自分にとってメリットがない行為です。
正義感が強すぎるからこそ、謝っている人を悪人であると決め付け、汚い言葉を放ったり、いじめと見られるような行動を取ってしまいやすくなります。
また、知らず知らずのうちに誰かを断罪することに快感を覚えたり、謝罪させることを相手を従わせる、相手から時間や労力を奪えるチャンスだと思っているケースもあります。
謝罪して相手を厚生させる、謝罪を通して同じ過ちを繰り返さないように対策を立てる行為が豊かな人間関係には必要ですが、それを無視してただ謝っている人をサンドバックにするような事は、お互いにとって幸せなことではありません。
そもそも腹の底から本当に悪いと思っているかどうかは、謝罪の行動からはわからないものです。
誠意を見たいからといって、漫画の「カイジ」に登場する利根川のように焼き土下座のような罰やお仕置きしてもいい、というわけでもありません。ましてや、罰やお仕置きのような権利は、国家や裁判所でもない一個人に当然認められる権利ではありません。
日本では何か不祥事を起こした芸能人や経営者の謝罪会見を見ても、まるで謝罪している人を十字架にかけられた極悪人、重罪人と見て、普段のストレス解消をするかの勢いで、汚い言葉や差別的な発言をしてもOKという空気があります。
そういった空気感があるからこそ、謝罪している当事者になりたくない、当事者になれば自分は世間から石を投げられる攻撃の対象になってしまう、と考えてしまう人が生まれてしまう事も覚えておきましょう。
謝ったら死ぬ病も謝らせたい病も、正しい反省を促せない。
日常生活においては、相手や自分が何かしでかしてしまったら、しっかり謝罪をする事。そして、また同じような過ちを繰り返さないために正しい反省を促していくのが大切です。
誰にだってミスや失敗は起こりうるものですし、ミスや失敗をしたらしっかり反省して繰り返さないようにするのは、円滑な人間関係を送ることであったり、ストレスをためてしんどくならないためにも大切です。
もしも、失敗が許されない、ミスが許されないという世界で生き抜くとしたら、ミスや失敗が起きても隠蔽する、誰かのせいにして知らんぷりする、ミスや失敗が起きないためになにも行動しないという生き方にならざるを得ません。ミスが許されない世界だと、リスク回避のために、誰も挑戦しようとせずに無気力になってしまいます。
また、そんな状況でも果敢に挑戦して失敗した人に対して死体蹴りのように、罵詈雑言や悪口、文句などをぶつけてしまっても、自分にとってなにもメリットはありません。ただ、自分の時間と労力を無駄に費やしてしまうだけで、なにも進歩がありません。
「謝ってたら死ぬ病」が蔓延しているのは「謝らせて死なせたい病」にかかっている人もいるからこそ起きている状況と言えます。
自分の非を認めて改善していくことは、自分も相手も幸せになるために必要な行為です。その行為すらできないような環境をつくる「謝らせて死なせたい病」にかかっていないか、気をつけるようにしましょう。