仕事や部活でミスをしたときに、相手にしっかり反省してもらうべく叱らなければいけない場面があると思います。
しかし、昔のように大声で怒鳴ったり、人前で公開処刑のようにするといった叱り方では、相手がパワハラだと感じて逆に自分の方が訴えられる可能性も否定できませんし、しかった相手がトラウマだと感じて家に引きこもってしまうなんてことにならないためにも、最近は叱り方には気を使わなければいけない世の中になっていると感じています。
パワハラだと思われたり、叱って引きこもられるのを避けるために、あえてミスをしてもなにもせずスルーしたり、代わりに誰かに叱ってもらって自分が嫌われないようにする人も少なくありません。
とはいえ、誰かが叱らなければ相手はいつまで経ってもミスを繰り返して、その度に周囲に迷惑をかけてしまうことになります。
自分の部下や教え子であれば、しっかり叱って教育していかなければ周囲の迷惑だけでなく自分の評価にも支障が出るのは言うまでもありません。
人の上に立つ者として、叱り方をしっかり身に付けるのは仕事をしていくためには大切なスキルであり、自分や相手だけでなく会社や集団の利益にもつながることになります。
今回は、できるだけ相手を精神的に傷つけないための叱り方のコツについてお話いたします。
相手を精神的に傷つけないための叱り方のコツ
怒鳴らずに落ち着いたトーンで話すようにする
叱ると目的は、大声で怒鳴ったり、感情的になって相手を萎縮させることが目的ではありませんよね。
叱るときに限らず、怒鳴り声はそれだけで相手を威圧したり強いストレスを与えて、相手の冷静さを奪いパニック状態にさせてしまうことがあり、自分が伝えたいことを相手が聞く耳を持たなくなってしまう恐れがあります。
きちんと相手が反省させるためには、カッとならず落ち着いたトーンで話すのが大切です。
落ち着いたトーンで話すことで、相手も冷静に話を聞くことが出来るだけでなく、叱る側も感情的になって伝えたいことが伝えられなくなるのを防げるというメリットもあります。
よく「叱ること=大声で怒鳴ること」と勘違いされている方が多いのですが、大声で怒鳴るだけでは同じミスを失敗させないために反省させることよりも、ミスをごまかすようになったり、ミスをしても隠そうとしてしまう原因になってしまいます。
怒鳴ってしまうと効果が薄くなる理由については以前書いた記事をご参考頂ければ幸いです。
人格否定はハラスメントにつながるのでNG
叱るときには「馬鹿」「アホ」「お前は使えない」「給料泥棒」と言った、人格否定をするような汚い言葉遣いは避けるべきです。
人格否定になる言葉は、反省を促すのではなくただ相手の自尊心を傷つけ心に深い傷を残したり、逆恨みや反抗心のような人間関係を悪化させる原因となる感情を生む原因になります。
また、仕事においては人格否定の言葉はパワーハラスメントとみなされる可能性も見過ごせません。
「昔なら多少汚い言葉でも許されていたし、みんないっていたから気にしすぎではないか?」と思う方もおられると思いますが、時代に関係なく人格否定の言葉を吐かれるのは気分のいいものではありません。
そして「昔は許されている」ように見えて実は我慢していた、我慢するしかなかった人たちがいたために、今のように人格否定の言葉に対しておかしいと主張できる世の中になったと考えられるようにしましょう。
レッテルを貼らない
レッテルを貼ってしまうと、自分の目線で決めつけるような発言をしてしまうので相手がなんでミスをしてしまったのかという話を聞く機会がなくなってしまいます。
ひょっとしたら、ミスの裏には人には言えない健康や将来への悩みがあった可能性があるかもしれません。
叱るときは自分が何かを言って反省させることばかり気持ちが傾きがちですが、相手から話を聞きアドバイスや解決策を探っていくことのほうがお互いのためになる叱り方なのです。
「あの人はできるそれに比べてお前は…」という他人との比較で叱るのは避ける
「あの人はちゃんと仕事ができるのに、どうしてお前はできないんだ…」というように、誰かと比較した上で叱る方法は効果的ではありません。
人と比較して叱ることは、相手や立場を状況を無視した独りよがりな意見であったり、自分の中の理想を押し付けることになるので、具体的なアドバイスではありません。
具体的なアドバイスをしたければ、叱られている人の能力や立場を考慮したり、相手の目線にたってどうしたら改善していけるか一緒に考えていく必要があります。
周囲に人がいない状態で叱るようにする
叱るときはなるべく精神的なショックを抑えるために、周囲に人がいる状態で、まるで晒し者のように叱ることだけは避けなくてはいけません。
周囲に人が居る状態に叱ると、確かに深く反省しているように見えて効果があると思われがちですが、叱られている当人は周囲から晒し者のように扱われたと感じて、自尊心が深く傷ついてしまいます。
メンタルの傷に敏感な人の場合、叱られたショックから立ち直るのに数時間、数日と時間がかかる事もあり、その間ずっと周囲に対して申し訳なさそうな態度をとったり、叱られた相手に対して過度に萎縮してしまうことがあります。
また、叱られている人を見るのは、たとえ自分に直接関係がないことであってもあまり気持ちの良いものではないと感じる人も多く、雰囲気を悪くしてしまう原因にもなってしまうので、叱るときは周囲に人がいない場所を選んで行うようにしましょう。
叱りっぱなしにならないようにフォローやアドバイスもする
叱る時は、改善すべき点や反省点ばかりを延々と言いい続けないように、フォローやアドバイスを適宜挟むようにするのが効果的です。
ダメなところを指摘する場合も「お前のこの行動(欠点)が人に迷惑をかけている」とストレートに言うのではなく「この行動(欠点)が直ったら、みんなが喜ぶようになる」と言い方を変えることで、ただ叱られたと感じるのではなくアドバイスをもらったと感じるようになります。
また、叱るときは最後はフォローやアドバイスの言葉で締めくくるようにすれば、その後の後味の悪い雰囲気を引きずりにくくなります。
お手本を見せたり一緒にミスを防ぐ方法を考えるようにする
説教をして指導しているように見えても、結局は指導する側という立場のポジショントークになってしまい、相手の立場に立って考える努力を自ら放棄してしまっていることがあります。
そんな口ばかりのお説教では、叱られている人との精神的な溝が生まれてしまい、共感や理解が得られないままになってしまいます。
下手をすれば、お説教のときは反省しているフリをして、裏では「あの人はなにもわかっていない」と不満や愚痴を言って、まったく反省しておらず、ますます溝が深まってしまうということもあります。
もちろん、指導する立場の人間として指導する人全員に目を配らなければならず、一人の人間にそこまで構っていられないという事情はあると思います。
しかし、もしもミスが何度も続いている、口先だけのお説教ばかり続いているのであれば、自分からお手本を見せたり、一度時間を取ってミーティングを行い一緒にミスを防ぐために話し合う時間を取るようにしましょう。
一緒の目線になって考える機会を設けることで、叱られている側は目線で物事を見て改善点を見つけやすくなる、叱られている側もただ口ばっかりの人ではなく、しっかりと部下や後輩のことを考えてくれる人なんだと相手を信用する気持ちが芽生え、お互いに心を開いて話せるようになります。
後味の悪い叱り方にならないためには、自分の叱り方を振り返るのが大切
叱るというのは、叱られる側にしてみれば恐怖であったり、どうしても避けたいことのように感じますが、実は叱る方にも苦労があります。
叱ったことで相手に嫌われていないか。叱った相手と次の日に顔を合わせたときに和やかな雰囲気で話せるだろうか…と、叱る側にも気苦労があるのです。
しかし、その気苦労は叱る側の工夫次第で小できることが、今回の記事を読めばきっと思い浮かぶはずです。
相手を傷つけて嫌われていないかな…という悩みは、相手を過度に傷つけないための言葉選びや話し方に寄って解消することができますね。
次の日も和やかに話せるだろうか…という悩みは、叱るときにフォローの言葉や相手を褒めてたり認めたりする言葉を叱る中で挟むことで解消することができますよね。
叱る側の悩みは、叱る側が自分の叱り方のテクニックを磨いて、なるべく悩みが起きないための工夫をしていないがゆえに必然的に起きてしまうものなのです。
どうすれば叱ったあとの後味の悪さが残らず、お互い前向きになれるためには、まずは自分の叱り方に関して振り返る機会を設けてみるようにしましょう。