SNS上で「今まで○○先生のファンでしたけどやめます」と言って勝手にブロックしたり、急にクソリプ(クソみたいなリプライの意)を投げて、ファンからアンチへと変貌してしまう人はよく見かけます。
今までとても熱心に半ば熱狂的にファン活動を続けてきたのに、急に心変わりして親の敵のように態度を変えてしまう人に共通している思考は「二極思考」と呼ばれているものです。
SNSのように「フォローするorしない」、「友達になるorならない」「ファンになるorアンチになる」というような白黒はっきりした関係が作れてしまう環境では、二極思考が引き起こされやすいといえます。
極端な気持ちの揺れ動きにより、衝動的な行動を起こしてしまえば、いわゆる「炎上」を引き起こしてしまい他のファンの人や憧れていた人に迷惑を書けてしまう事もありますし、自分も相手も精神的に疲れ果ててしまう事があります。
今回は極端な思考から極端な思考に移る、二極思考について説明していきます。
なお、アンチになる人の心理について以下のリンクからご覧下さい。
二極思考(にきょくしこう)とは
二極思考とは、ファンからアンチになるように、考え方が極端から極端に動いてしまう思考のことを言います。これとほぼ同じ意味の言葉には「白黒思考」やコンピューターの情報処理で使われる「0(off)」か「1(on)」の2進数を参考にして、「1ビット思考」などがあります。
物事を白か黒かの二極化で物事を判断し、白でも黒でもないグレーな部分を考えることができない状態で、「敵か味方か」「好きか嫌いか」「満点か0点か」のようにどちらに転んでも極端な考え方に陥ってしまいます。
この二極思考は、心理学で精神病を起こしやすい考え方を指す「認知の歪み」の「スプリッティング(全か無かの思考)」であり、2つあるどちらの思考も共に現実を正しく理解できていない状態になります。
例えば、今までとても仲良くお付き合いしていた恋人が、なんだか最近冷たくなったと感じたからといって「もう、この恋は終わりだ!相手は自分のことを大嫌いになっているに違いない!」と決め付けてしまうのは早すぎます。
もしかしたらちょっと体調が悪くて冷たく見える態度を取っただけかもしれませんし、だいぶ打ち解けてきたからこそ、ちょっと恋に対して落ち着きが出てきているのかも?という可能性も考えられます。
恋仲と言っても、常に猛烈で情熱的な関係というわけではなく、愛が強い時もあればそうでない時もあり、二人の関係性には波があるのが自然なことです。
しかし、二極思考の場合その波を正しく認識できず、ちょっと思い通りにいかないことが起きればすぐに「大好きor大嫌い」という極端から極端な思考へと目まぐるし移ってしまいます。
二極思考に見られる特徴
二極思考は境界性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害の人に多く見られ特徴と言われています。
境界性パーソナリティ障害における二極思考には、以下のような共通点があります。
同じ相手に極端な態度を取ってしまう
憧れている有名人に対してファンからアンチになる。恋人に対して大好きから大嫌いに気持ちが変わるなど、同一人物に対して極端な行動や態度に出てしまうことです。
最近は芸能人や有名な漫画家、イラストレーターなどもSNSで直接ファンと交流できる機会が増えてい一方で、二極思考を持つファンと接触する機会も出て来るようになりました。
今までファンだったのに急にアンチになって罵詈雑言を吐かれて精神的に追い詰められたり、無駄な炎上騒動を避けるためにあえてファンと距離を取る、SNSのアカウントを削除する人もいます。
今まで自分のことをベタ褒めしてくれて、熱心に応援のメッセージを送ってた相手から、急に「先生には失望しました。もう、貴方のファンをやめます!」と突きつけられるのは、全く見ず知らずの人から同じことをされるのよりも精神的なショックは大きくなるものです。
繊細な人の場合だと、たった一人ファンからアンチになった人の影響で、メンタル面を崩してその後の創作活動に支障が出てしまうという事もあります。
自分の評価が極端に変化する
他人だけでなく、自分に対する評価も極端から極端へと移り変わるのも二極思考の特徴の一つです。
例えばテストで自分が納得できる点を取ったときに
- 自分は天才だ!
- この点数なら絶対に志望校に合格できる!
と、明らかに有頂天になって舞い上がってしまう。
しかし、たった1点でも納得できない点をとっただけで
- 自分は馬鹿だ…ダメダメの人間だ
- この点数では絶対に志望校に落ちる
- 自分には生きてる価値がない
と過度に落ち込んでしまうという例です。
当然ながらテストの点数だけで必ず志望校に受かるかどうかの判断はできませんし、ましてや100点満点のテストで99点だったからといって、自分の人生が終わったというわけでないことは、冷静に考えればしぜんと理解できることです。
しかし、二極思考の場合はその自然な状態を認識できておらず、自分に対する極端に二分化された評価によりストレスを抱えてしまう原因になってしまいます。
この考え方は、完璧主義者や自分に対して厳しすぎる人にも見られる考え方です。
グレーな状態の無い白黒はっきりさせた考え方で全てを考えることで、余計な考え方に惑わされずに済みますが、世の中は何もかも二つに分割できるものばかりではないという事実に逆らっている考え方と言えます。
相手によって極端に態度を変える
リアルではなかなか自分の考え方が共感されない、周囲からの理解がされにくい生活を送っている人にとって、SNSはそんな現実社会で理解されにくい者同士がつながる事ができる便利な場所です。
しかし、当然ながらSNSでも現実のように自分のことを理解してくれるひとばかりではなく、批判的な考え方を持っていたり、お節介やアドバイスをかけてくる人も存在します。
そのような人に出会ったときに
- 自分の意見に反対する人は全員敵である
- 自分の意見を肯定する人は全員味方である
というように、相手によって敵か味方かと極端に考えてしまい、敵でも味方でもない人、半分賛成で半分反対といった人まで敵視してしまうのも、二曲思考の特徴です。
敵か味方か、正義か悪かの二極思考で他人を判断する事は、人間関係でトラブルを引き起こす原因になってしまいます。
例えば、自分が悪だという相手を見つけてしまえば、自分が行う暴力や暴言は正義だと肯定してしまうために、教育やしつけという名目でいじめや体罰・パワハラをしてしまうのも正義とんなってしまいます。
手を出している本人は決して「自分は悪いことをしていない」「相手が間違っているから私は正しいことをしているだけだ」と考えてしまうのは、二極思考が影響していると考えることもできます。
自分は正しいと考えているからこそ、思考や行動にブレーキがかかりにくくなっているのです。
また、SNSでは自分の気に入らない人の声はブロックすることで、一方的に関係を断ち切ることができてしまい、二曲思考をより強固にしてしまいます。
もちろん、意見が合わない人と物理的に距離を取ることの効果は否定しませんが、極端な自分の思考に合う人とばかり交友を重ね続けると、宗教や怪しい自己啓発セミナーのような人間関係ができてしまう事もあります。
たとえ自分の意見に対して、何の反応を返さない人が目の前にいたとしても、「この人は何の反応も返さないから敵だ」と決め付ける事はできません。
声に出していないだけで、心の奥底では貴方の意見に共感を覚えていたり、自分の気持ちを言葉にするのが苦手だったり恥ずかしがり屋なのであえて黙っているという事も考えられます。
ただ、自分に対する期待通りの反応が無いだけで相手にレッテルを貼り付けるのは、自己中心的な考え方で相手の意見や反応に対して、こちらから歩み寄っていないともいえます。
二極思考によるストレスを減らすためにできること
人間は完璧にできていないことを受け入れる
二極思考は、完璧主義や間違いを認めるのが苦手な方に多く見られます。
完璧であるべきだ、間違いがあってはならないと高い志や向上心を持つことは素晴らしいことですが、その考え方が強すぎるとストレスを生み出す原因になってしまいます。
そもそも、勉強やスポーツ・仕事においてミスを完璧になくす事はできません。人間である以上、ついうっかりしたミスを起こしてしまう事は誰にでもある自然なことであると受け入れることで、自分や相手のミスを許容できる考えを身につけて行くのが二極思考で苦しむのを防ぐ方法です。
また、白黒はっきり付けようとする場合は、人間には白い部分も黒い部分もそのどちらでもないグレーな部分があるという事もわかるようになるのが大切です。
真面目な人だからといって、24時間365日真面目100%というわけではありません。外から見えないところで数%はすこしズルをしている事もありますし、真面目の度合いも日によって株価や為替のように数十%ほど変動するのは自然なことだと理解するようにしましょう。
他人に期待を求めすぎないようにする。
自分が尊敬している漫画家やイラストレーターのファンだからといって、その人に創作活動以外の日常生活のシーンまで、「自分が求めている理想の人であること」を求めてしまい、ちょっとでも理想通りにならなかっただけで「裏切られた」と感じてしまう人がいます。
しかし、尊敬の念を抱かれている相手は、雲の上の人とはいえ生身の人間なので、いつも理想通りの汚れのない美しい姿を保つことはできません。時には脱力することもありますし、漫画家ではなく、一個人としての余暇を楽しむ活動をすることもあります。
また、自分の期待通りに物事が進むというのは、実はそれほど嬉しさを感じにくいものなのです。
期待通りというのは「物事はこうあるべきだ」という自分の思い込みにすぎません。その思い込み通りに進んでも「なんだ、こんなものなのか」と感じてしまう、期待に沿ってないと期待はずれと感じてしまい、ストレスを溜めやすい考え方と言えます。
何の期待もしていない相手から、予想外のサプライズプレゼントの方が喜びも大きいように、他人に対して自分の理想や期待を押し付けないことは、余計なストレスを抱え込まない事につながります。
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