例えば、スポーツの試合のように緊張感がありストレスフルな場面でいいパフォーマンスができるのは、ストレスに弱い選手よりも、ストレスに強い選手の方なのは、簡単に想像できますね。
このようにスポーツに限らず勉強や仕事の世界では、どれだけストレスに対して強いかという「ストレス耐性」が重要視される場面がよくあります
一般的にストレス耐性があることは良い事、価値のある事、それだけで素晴らしいこととして、一方的に持ち上げられているように感じることもあります。
逆にストレス耐性が弱いという事は、ちょっとした事ですぐ落ち込んでしまうので面倒な人、付き合い方や接し方がわからずコミュニケーションをとるのが難しい人と、あまりよく思われることはありません。
就職活動の面接においても、ストレス耐性を見るためにあえて厳しい言葉をかけたり、詰めの甘さ付くような質問をして、就活生をふるいにかける企業もあります。
なお、この採用方法だと、やり方をちょっと間違えれば、圧迫面接になりブラック企業と批判されてしまいますが、そうまでしても就活生を選ぶという事は、それだけストレス耐性を重視されているということの裏返しでもあります。
しかし、見た目や外見でストレス耐性が強いと思われる人であっても、実はストレスに弱いことで悩んでいたり、最初はストレス耐性があったのに次第にストレスに弱くなってしまったという事態になることがあります。
こういった、ストレス耐性が強いと思われる人だからこそ、抱えてしまう悩みや問題点、その解決方法などをお話します。
見た目でストレス耐性が強いと思われる人の特徴
私たちは人を見た目で「この人はストレスに強そう」「この人はストレスに弱そう」と判断しています。ここでは、いわゆるストレス耐性があると思われやすい人の特徴を説明していきます。
体育会系、スポーツマン
体育会系の部活動に所属していたり、スポーツをしている人は、普段からトレーニングをしているので、心身ともに鍛えられており、ストレス耐性があると思われる特徴の代表です。
勉強や仕事で成功している人
スポーツ同様に勉強や仕事で成果を上げ、成功している人は、ストレスに強いと思われる特徴です。プレッシャーや負担に耐える力があると思われやすい傾向があります。
健康的な人
病弱な人よりも、健康そのものな人の方がストレスに強いとよく思われます。病は気からという言葉にもありますが、普段から明るく前向きで多少のストレスでくじけないからこそ、健康な人はストレスに強いと判断されます。
感情表現が苦手、感情をあまり表に出さない人
会話をしたり接している中で、あまり自分の気持ちや感情を顔に出さない人は、「この人は多少のことでは動じない人」「きつい事を言われても泣いたり、パニックになったりしない」と思われ、ストレスに強いと思われる傾向があります。
しかし、内心ではパニックになっている、またはストレスを我慢して溜め込んでいるという事もあり、限界に達するとキレてしまう事もあります。
女性よりも男性
昭和の頃と比べて女性の社会参加が進んでいますが、それでも女性よりも男性の方が力もメンタルも強い、タフである、という古い考え方をしている人はいます。
そういう時代を過ごしてきた人から見れば、男性はストレスに強くて当然であるという考え方になるのは自然なことです。
自分の軸を持っている、マイペースな人
他人になんと言われようとも、自分の軸を持ってマイペースを貫き通す事が出来る人は、ストレスをうまく避ける技術があり、ストレスに強いと思われます。
もちろん、これ以外にもストレスに強いと思われる特徴は数多くあります。
しかし、自分がこの特徴に当てはまっているとしても、実際はストレスに弱くて悩んでいるという事で悩んでいる人が多くいます。
ストレス耐性が強いと思われる人が抱えやすい悩み
この悩みの厄介なところは「一般的にストレスに強そうと思われるのに実は弱いという事」で周囲からの理解が得られにくい事です。
理解が得られにくいので、ストレスに弱いと周囲に打ち明けても否定されることが多く、孤立感を感じたり、ストレスのかかるコミュニケーションを続けられてしまいがちです。
また、ストレスに強いというイメージを崩して周囲をがっかりさせないためにも、「実は自分はストレスに弱いんです…」と、なかなか言い出しにくい事も悩みのひとつです。ストレスに強いというプラスのイメージを、自分から消すような事は普通はあまりしたくないものですね。
また、自分がこの特徴に当てはまっているからストレス耐性があると思い込んで、実際は自分はメンタルが弱いという事実から目をそむけている事もあります。
特に、スポーツを長年やったり仕事や勉強で成果を上げているという事実があったとしても、だからといって必ずストレス耐性があるという根拠にはなりません。たまたま調子がよくて、ストレスの影響を受けにくい状態だっただけということもあります。
自分自身がストレスに強いというステレオタイプに囚われて、自分の本当のストレス耐性を知らないと、正しいストレスのコントロール方法を知らないままの状態で過ごしていくことになります。
また、心の奥底ではストレスに弱い人のことを嫌っている、見下している場合も要注意です。
今の日本ではストレスに強いことが何より貴重であり重要視される一方で、ストレスが弱い人の事を「情けない人」「価値のない人」「弱くて頼りにならない人」というように、あまりいい評価をされることはありません。
そのような価値観に飲み込まれて、ストレスが弱い自分の事を正しく認めようとせずに、無理にストレスフルな環境に飛び込んで、心を病まないようにしていくことも大切です。
ストレスに強いというイメージがあると「実は自分はストレスに弱い」という事を打ち明けても理解されにくい。また、ストレスに強いというイメージを崩したくないために、打ち明けられないという悩みもある。
また、自分は本当はストレスに弱いという事実を認めようとしない事や、ストレスに強いことに価値があり、そうでない人に価値がないという価値観も、悩みを増やす原因になっている。
ストレスをうまくコントロールする技術を身に付けよう
実はストレスに弱いことで周囲からの理解が得られにくい場合は、周囲からの理解を得られるように、まずは周囲の人たちを理解するように心がけましょう。
例えば仕事の場面。ストレス耐性がありそうに見えるけど、実際はストレスに弱い部下が、どうしたらそのことを上司に若手もらえるか、という場面を想定してみます。
ただやみくもに上司に向かって「私はストレスに弱いです!」というひとりよがりの主張では、上司に限らず同僚や自分の部下にも気持ちは伝わりませんね。
そうならないためにも、相手の気持ちに寄り添ったり、うまく伝わる場面や状況を考える、何回にも分けてしっかりと打ち明けるなどのやり方で打ち明けるのがコツです。
なお、しっかり打ち明けても相手の接し方が変わらない場合は、人間関係を変えたり、ストレスをうまくコントロールするテクニックを自分で身に付けていくのが効果的です。
今の人間以外にも、悩みを相談できるような人間関係を持ったり、ストレスを溜め込まないように、適宜休暇や息抜きの時間を作ってリフレッシュするなどの方法があります。
仕事の場合なら部署の異動をしたり、困ったときは誰かに相談できるようにして、ストレスを溜め込まず適宜コントロールできるようにする働き方を身につけるのがコツです。
また、ストレスに対するコントロールができたとしても、ストレスに対して弱い人をネガティブに捉える考え方をしているのなら時間をかけて直していくことがストレスを溜め込まないためにもたいせつです。
「ストレスに強い人は価値のある人。逆にストレスに弱い人は価値のない人」という価値観は、ある一つの狭い価値観に過ぎません。
もちろん、ストレスに強いことはそれは一つの価値ではありますが、人間の価値はストレスに強いかどうかだけでは決めることはできません。ストレスに弱くたって、しっかり勉強できる人や、ストレスに弱いからこそ優しさや慈しみの精神を持った人もまた価値のある人です。
同じ日本人でもいろんな価値観を持った人がおり、簡単にこういう「性格の人には価値があるor価値がない」と優劣を決め付ける事はできません。
そういった多様な価値観を知っていくことで、ストレスが弱いからといって価値が全く無いという歪んだ思考から開放されていくようになります。
最後に、どんなにストレス耐性が強い人でも、人間が許容できるストレスには限度があり、それを超えるとメンタルや体調に不調がでてしまいます。
そういう時に、「自分はストレスに弱くてなんて無価値な人間なんだ」と自分を深く責めないためにも、ストレスに強い、弱いだけで判断しない視点を持つことが、いいメンタルの調子を保つためには大切です。