毎年就職活動では文化系やサークルをしていた人よりも、体育会系の人を進んで採用している企業は多くあります。
就職活動において体育会系といえば、「体力がある」「ストレス耐性が強い」「協調性がある」というイメージで語られることが多いですが、なんといっても「コミュニケーション能力がある」というイメージが強い人たちです。
コミュニケーション能力も詳しく紐解いていくと
- 挨拶がしっかりできる。
- 目上の人への気配りができる。
- 上限関係をしっかりわかっていて立場に応じた振る舞いができる
- 初対面でも恥ずかしがらずに会話ができる。
などの仕事をする上で欠かせない総合的な能力のことを指し、これらの能力は体育会系の部活動で先輩や後輩、指導者やコーチと接する中で養われていくものです。
しかし、体育会系出身と言っても全ての人がコミュニケーション能力に秀でているというわけではなく、いわゆるコミュ障と呼ばれる人も存在しており、そのことがコンプレックスになっている人もいます。
今回は体育会系なのにコミュ障な人の共通点についてお話いたします。
コミュ障(コミュニケーション障害)とは
よく「私はコミュ障なんです」と自己紹介する人がいますが、ここでいうコミュ障(コミュニケーション障害)とは、精神医学や心理学の自閉症スペクトラムや対人恐怖症のように専門のカウンセリングが必要なほどに深刻なものから、単なる人見知りや恥ずかしがり、ちょっと天然なところがあるという性格に至るまで幅広い意味で使われています。
いわゆる軽度のコミュ障にも
- 人見知りで初対面の人と離せない。
- 誰かと会話する場面で赤面したり、過度に緊張しててしまう。
- どもったり、思っていることがうまく口に出せない。
- 勝手に空気を読みすぎて自分の頭の中で考えこんでしまい、結局何もしゃべれない。(認知の歪みの「結論の飛躍」の状態)
というように、なかなか人とおしゃべりが出来ないタイプの方がコミュ障のイメージとして多くの人が抱いています。
しかし、一方では
- 周りの空気を読めずに、自分の方から一方的に饒舌な話し方をしてしまう。
- 自己主張が激しく、自分を認めてもらうような自慢話や自分語りばかりをしてしまう。
- 説教くさい話になったり、価値観を押し付けるような会話になる。
- 自分の意見や主張が通らないと、相手を侮辱したり攻撃的な態度をとる。
というような、しゃべりすぎて鬱陶しいと思われるタイプのコミュ障も存在しています。
このタイプのよくしゃべるコミュ障は、体育会系の人によくありがちなコミュ障であり、体育会系の文化に馴染むと自分はコミュ障であるという自覚が無いまま社会人になってしまい、人間関係でトラブルを起こす原因になってしまいます。
なお、どちらのコミュ障も言葉のキャッチボールができていないという状況に変わりはありません。
前者の場合は、自分に来たボールを相手にしっかり投げ返せていない。後者の場合は、相手のいないところにボールを投げている、と考えるのがいいでしょう。
体育会系なのにコミュ障の共通点
個人スポーツの部活動をやっていた
体育会系といえば野球やサッカーなどの集団でやるスポーツの方がメジャーですが、陸上競技や水泳などの個人プレーがメインのスポーツも体育会系のひとつです。
個人スポーツをやっていた人の場合、集団スポーツのような先輩後輩の上下関係にあまり馴染みがなかったり、普段の練習も一人でやることが多いので、部内で会話をする機会がなくコミュニケーション能力が育ちにくいという事も少なくありません。
また、個人スポーツなので協調性を大事にしてチーム全体で頑張って結果を出すことよりも、自分がどれだけいいプレーをするかで試合の結果が左右されると考えており、体育会系なのにチームワークが無く冷たい人、ビジネスライクな人と印象を受けるという事もあります。
もちろん、自分で練習メニューを立てたり周囲の意見に惑わされずに自分の意見を言える良い面もあるので、過度にチームワークを強要して成長の芽を潰してしまったり、なんだか生意気な奴だと早合点して冷たくしないようなコミュニケーションをしていく事が大事になります。
こだわりが強く、職人気質である
体育会系の人でなかなか打ち止められない人には、自分の心の中のルールにこだわりがあったり、職人気質で他人に対して不器用な面があるのも共通点のひとつです。
筋トレや技術練習のように地道で辛い苦行にも見えるトレーニングを、コツコツと継続することができた人ほど、考え方に癖ができることがあります。
スポーツの場面においてはコツコツ頑張ることは、その人にしか出来ないプレーや演技ができるようになるためには必要なことですが、仕事においては必ずしもその人にしか出来ないことばかりをやると、同僚や上司・部下に迷惑をかけてしまう事もあります。
強いこだわりがスポーツの場面では自分にとってプラスになった一方で、仕事においてはマイナスに働くということはよくあります。
持ち前のこだわりやコツコツ努力を積み重ねる根気強さが活かせる職種に就けばストレスをあまり受けないで住みますが、他人と協力する仕事や接客業、営業などの対人コミュニケーションが必要な職種では、こだわりの強さがが空回りを生んでしまうという事も少なくありません。
体育会系だからと言って体力とガッツがあるから営業に回す、という考えている人は多くいますが、このタイプの人は慣れない営業で自信を喪失してしまいやすく、その状態で他の部署に回されてもすっかりなくなった自信のせいで、自慢のこだわりが発揮できにくくなりがちです。
いわゆる脳筋タイプで学習する習慣が無い
学生時代に体育会系で毎日練習していたという人は、言いにくいことではありますがあまりお勉強ができる、学力が高いという人は多くありません。
勉強ができないから体育会系にならざるを得なかった、勉強が苦手だから体育会系で頑張る方法でしか進路を決めることが出来なかったという人はよく聞きますね。
いわゆる知性的ではなく感情的、時に衝動的。ノリと勢いで行動するので、脳まで筋肉でできていると揶揄する意味を持つ「脳筋」と呼ばれる人達が、体育会系の漠然としたイメージという
この脳筋タイプの人で学習能力がなくただ先輩やコーチに言われたことだけ淡々とこなしていた人は、上の命令はしっかり聞くけれど自主性や積極性が乏しい傾向があります。
仕事の場面なら上司や先輩の指示通りに動く事はできますが、それ以上の事はできず気が利かないということがよくあります。上の言うことはしっかり聞くので先輩から可愛がられる事はあるものの、同年代や同期とうまく会話出来ないという特徴もあります。
また、出世して部下を持つ立場になっても、積極性がないので自分から指示を出すがの苦手。学習する習慣も無いのでその場限りの場当たり的な指示に陥りやすく、部下が必死に上司のフォロー(尻拭い)をして、非効率な仕事になりがちです。
自分を変えるためにあえて体育会系に所属していた
人見知りが激しくて口下手な自分を変えるために体育会系に所属していた人は、ある程度口下手なところは解決したように見えても根本的なところは変わっていないということがあります。
自分では社交的な人間になったように見えて、実は同じく体育会系の人間同士で通じるコミュニケーション方法が身に付いただけにすぎず、根本的な口下手なところは変わっていないというオチです。
また、体育会系のコミュニケーションが加速して、他人に対して厚かましくなったり、としゃべれないタイプのコミュ障からしゃべるタイプのコミュ障に変わっているだけという事もあります。
体育会系は体育会系以外の組織ではコミュ障になることも
何かと体力やメンタルの面で採用でも重宝されやすい体育会系ですが、体育会系でよくある上下関係を絶対に守ることや、空気を読んで集団の和を乱さないように行動する人が少ない職場では、体育会系の人の方がコミュニケーションを取ることができなくなることがあります。
体育会系の人は行動力がある、積極性があるように見えてコミュニケーション能力が高いと思われがちですが、よくよく見れば体育会系でよくあるテンプレートの行動が身についているだけにすぎず、そのテンプレートが通用しない人間関係では会話が通じないということがあります。
体育会系に代表される先輩・後輩の関係のように、年齢やキャリアによる強制力が働く立場だと、自分が口下手でもうまく話ができる一方で、同期や同年代のように立場による強制力が働かない対等な関係では、どうやったらうまく会話ができるのかがわからないという体育会系の人は少なくありません。
多少のコミュ障でも今まで話が通じていたという人の中には、実は年齢や立場で自分のコミュニケーション能力に下駄を履かせていただけにすぎず、その下駄を脱いだ対等な関係では自分のコミュ障っぷりが見えてしまうということです。