SNSやブログなどのネット上において、自分の投稿内容が原因となってネガティブなコメントが大量に来たり、自分の投稿が拡散される…
いわゆる炎上が起きてしまった場合、その炎上を無視することが必ずしも正しい対処法というわけではありません。
もちろん、普段から炎上を起こさないような対策をして自衛しておくことが基本ですが、もし万が一炎上が起きてしまったときは、無視や放置をせずしっかり謝罪をしたり、説明を行うことが炎上被害を抑えるためには欠かせません。
今回はSNSやネット炎上を無視してはいけない理由について、お話いたします。
なお、炎上の防止方法については以下の記事で詳しくかいせつしています。
炎上参加者はごく少数だが、その影響は無視できない
書籍「ネット炎上の研究」によれば、炎上参加者は全ネットユーザー中の0.5%ほど。数にすれば約200人に1人という計算になります。
そんなごく少数派のネットユーザーのために、いちいち発言を撤回したり謝罪することは正直アホらしく思えてきて、できれば謝罪せずにスルーしたり、何かと言い訳をつけて炎上を放置したほうが精神衛生上好ましいと感じることもあるでしょう。
とくに普段から、過激言動や自称サバサバ系などのキャラを演じてネット上で物言う芸風が身に付いており、それで一定のフォロワー(支持者、友達等、ファン)を集めている人であれば、簡単に謝ることは自分を支持してくれる人を裏切ることになるので「謝ったら死ぬ病」のように意地でも謝罪をしない姿勢が原因となって炎上を悪化させてしまうことがあります。
しかし、炎上で注目すべきは参加者の数の大小ではなく、
- 自分の投稿が不特定多数の人に拡散され閲覧されてしまう
- 自分に対するネガティブなイメージが広まってしまう
- 嘘やデマが混じった情報が拡散されてしまう
といった、悪影響が出てきてしまうことです。
そして、炎上に直接参加していない人の目に触れたり、場合によっては匿名掲示板・まとめサイト・ニュースメディアなどを通じて、多くの人の目に触れてしまうリスクがあることです。
ごくごく少数派が炎上の火種を拾って拡散させたと言っても、それを「所詮少数派の言いがかりだから無視すればいい」と決め込んで無視し続けていれば、悪影響を防げなくなるどころかその態度が炎上参加者の燃料となり、炎上を悪化させる原因になりかねません。
これが個人ではなく、企業の公式アカウントでの炎上であれば、企業に対する信用やイメージの悪化、同業者や関係他社へのイメージ悪化、炎上の情報が他のメディアに掲載され不特定多数の人から検索などを通じて閲覧されてしまうことになります。
炎上が広がりすぎると、失った信用の回復や事実を説明して正しい情報を認知をするのに多大な時間を要することになり、経済的な意味での損失も拡大してしまいます。
炎上を無視すると起きうる事
説明放棄、逃亡、隠蔽と思われ炎上が悪化する
炎上を無視することは、
- 自分が果たすべき説明責任を放棄していると思われる。
- 自分の非を認めたくないために逃亡していると思われる。
- 炎上の悪化を防ぐために隠蔽していると思われる。
とネットユーザーから受け取られることが多く、まさしく火に油を注ぐ行為とも言えます。
とくに、炎上で多く見られる、
- 犯罪やグレー行為、不祥事の自慢
- 誰かのプライバシーを侵害するような言動
- 過激な発言、差別を含む発言
- 挑発や煽り行為
などの、人の感情を逆撫でしたり、不快な気持ちにさせる行動がきっかけの炎上は、炎上後に無視を決め込んでいると説明放棄、逃亡、隠蔽だと思われやすくなります。
加えて、このケースでは普段から炎上しそうな投稿を頻繁にしていることも多く、過去の投稿が調べられてまとめられたり、そのまとめを見た人により新たな炎上を生み出す可能性も否定できないので、何かしらの対処をすることが必要といえます。
炎上を起こした本人の関係者に被害が及ぶ
炎上は起こした本人だけに被害が出るというものではありません。
無視した事が原因となり、ネットユーザーが炎上の元となる投稿をした本人の関係者や所属先を特定して、そこに誹謗中傷のコメントを残したり、電凸(電話による突撃取材)やメル凸(メールによる突撃取材)を受けることがあります。
例えば、バイトテロのように飲食店でアルバイトをしていた若者による迷惑行為がかつて話題になりテレビでも取り上げられたことがありましたが、この時はバイト本人だけでなく、所属先の飲食店や経営者、企業の代表取締役にまで影響が及び、謝罪や炎上の経緯の説明をする事態にまで発展しています。
もちろん、働いている場面での炎上に限らず、プライベートな場面での炎上でも、
- 自分の投稿していた写真から家族や友人、知人にまで被害が及ぶ。
- 自分の投稿内容から勤務先(or所属している学校)が特定されクレームや苦情が来る。
といった、炎上に無関係の人・団体にまで炎上の火の粉が降りかかることもあります。
まるで借金をトンズラして回収できなくなったから、連帯保証人のところに行って借金を回収するように、炎上の火元となる張本人との連絡が絶たれると、ネットユーザーは手当たり次第に関係者をあたり、全く無関係の人にまで迷惑をかけてしまうことがあるのです。
炎上発生後に無視せず速やかに対処することは、自分に関わる人・団体に多大な迷惑をかけないためにも必要な事と言えます。
公式による正しい情報が提供されずデマ情報が氾濫する
炎上した張本人が無視を決め込んでいるとなると、公式な情報が提供されないことからネットユーザーによる憶測や妄想が入り込んだデマの情報が生み出され、その情報が拡散されてしまうことがあります。
「だんまりを決め込んでいる=説明できない何かがある」と疑われやすいことから、無視をしている期間が長くなればなるほど、嘘やデマを含んだ情報がネット上に溢れてしまいます。
また、その嘘を含んでいる情報を見た誰かが、その情報を真実だと思い込んで誤解が生まれたり、デマ情報を信じた人が更なる炎上を巻き起こして自体が悪化してしまう恐れもあります。
炎上であっても事実関係を把握して公式に見解を述べたり説明をすることは、新たな炎上や炎上によって発生した嘘の情報に騙される人を生まないためにも重要です。
炎上が起きた後の対応
謝罪
炎上は何かしら自分がしでかした過ちやミスが原因として起こるものであり、そのことについて素直に謝罪をすることは必要不可欠です。
もちろん「自分は何も悪くない」「間違っているのはネットユーザーの方だ」と感じて謝罪できない人もおられようかと思います。
しかし、先にも述べたように炎上は一個人だけの問題ではなく、関係者や所属先にも被害が及ぶものであり、謝罪するのが納得できないとしてもそのことを文面から匂わせず、しっかり謝罪することが、炎上による更なる被害を防ぐためにも重要です。
事実確認及び説明
謝罪をするときに同時に行っておきたいのは、現時点で確認できる事実確認とその説明をしておくことです。
5W1Hに基づき、
- いつ
- どこで
- 誰が
- 何をして、どのような行動をして
- なぜそのような行動をとったのか
- その結果どうなったか
を出来る範囲でいいのでまとめて説明することで、炎上被害をなるべく抑えるようにします。
また、把握している事実を説明するときに、既に嘘の情報がネット上で拡散されている場合はどこが嘘なのか、どうして嘘なのかの説明も行い、間違った情報を訂正することも大事です。
再発防止策を練る
炎上が起きてしまった以上、また同じような事態になるのは避けるべきです。
普段の発言や投稿内容を振り返ったり、誤解や不快感を招くような投稿をしていないかを見直して、再発防止策を練ることが重要です。
なお、再発防止策は謝罪や説明のときにできるだけ説明することが望ましいですが、内容によっては防止策の中身が理解できない人が出てきて更なる混乱も招くこともあるので、内容を簡単なものに変更したり「再発防止策を練ってます」と伝えるだけでも効果があるといえます。
補足:「炎上は無視します」と投稿するのは悪手
ごくまれにですが、炎上が起きているときに「炎上は無視します」「炎上を起こしているアンチは無視します」と、炎上を起こしているネットユーザーに対して、勝利宣言をするかのような投稿をして、更なる炎上を招いてしまう人を見かけることがあります。
これは、自分と直接面識のない人から大量の誹謗中傷や(まっとうなものも含めた)ネガティブなコメントが来ることで冷静さを欠いて、このような発言をうっかり投稿してしまうことが原因として考えられます。
また、普段から炎上をする習慣や芸風が身についている人や、自分のプライドが高すぎる人はなかなか素直に非を認められず、アンチによるものと決めつけて無視を決め込む傾向があります
このようなことを起こさないためにも、炎上への対応はなるべく冷静に、できれば複数人で行うことも方法の一つと言えます。
「炎上は無視すればいい」という意見について
ネット上では
- 炎上なんて所詮アンチの妬みなんだから気にしなくていい。
- 少数の面倒な人が騒いでいるだけなんだから、放っておけばそのうち静かになる。
- 炎上するような奴は暇人だから、どうせ相手にするだけ無駄。
という炎上はスルーするのが正解と言わんばかりの意見も、とくに炎上を頻繁に起こしている人によく見られます。
炎上は内容によりけりですが、短ければ1日以内、長くても1~2ヶ月程度で鎮火することも多いので、無視することが必ずしも間違っているとは呼べないのも実情です。
しかし、上にも述べたように炎上を無視した事による悪影響が自分の知らないところで広まったり、無関係の人に被害が及ぶこともあるので、プライベートでも炎上もビジネスでの炎上でも、基本的に無視せずしっかり対応をしていくのが望ましいと言えます。
なお、ネット上の人間関係では、不要なトラブルを避けるためにスルースキル(=無視をする技術、習慣)を鍛えておくことは大事ですが、炎上が起きてしまった後にスルースキルを発揮すると、その行為が更なる反感を買うハメになるので注意が必要です。