体育会系と言えば厳しい上下関係に耐えられる、体力もある、ストレス耐性もたかく、ちょっとのことではくじけないという強みをもっている人が多く、部活動だけでなく仕事でもその強みを発揮して成果を上げる人が目立ちます。
しかし、体育会系だからといって、必ずしもメリットしかないというわけではなく、デメリットもきっちりとあります。
とはいえ、体育会系のデメリットは体育会系の人間関係の中にいるとなかなか自覚しにくい、またデメリットを感じてもそのことを同じ体育会系の友人や上司に言うのは、自分が所属している集団を否定しているように感じて、なかなか口に出すのも難しいものです。
今回は、仕事における体育会系のメリット・デメリットについてお話いたします。
体育会系のメリット
上下関係のある人間関係にすぐに馴染める
体育会系の人間関係を象徴するのは「先輩・後輩」の関係であり、年功序列の意識が強い会社や(能力はどうあれ)年上の人に対して敬意を表し、後輩らしく大人しく振舞うという上下関係のある組織に、すんなりと馴染みやすいのが特徴的です。
社長や上司、取引先の相手やお客さんに対して失礼な態度を取るべきではない…という至極最もな振る舞い方を、すでに体育会系の人間関係の仲で身につけてきているので、新入社員を選ぶ側としても体育会系はすくなくとも「最低限の上下関係は身につけているから安心できる」と思われ、好印象を得やすくなります。
理不尽に対する耐性がある
上下関係のある人間関係においては、しばしば立場が下の人間が上の人間から理不尽な目に合わされることもありますが、体育会系であれば、すでに学生時代に先輩や監督から立場が上の人からの理不尽に対する耐性があり、仕事でもその理不尽に対して順応が容易です。
例えば仕事においては
- 始業前○分にはすでに職場について掃除や準備をしておく。
- 面倒事や雑務を押し付けられる。
- 残業に付き合わされる。
- 気分が乗らない飲み会や宴会に付き合わされる。
- 上の意見には「はい!分かりました!」と即答し、それ以外の反応を返すのはNG。
と言った、納得できないことや正直気に入らないと感じても、なんだかんだいって引き受けて、その場をやり過ごすことが容易になります。
規律や命令をしっかり守る習慣が身についている
体育会系の文化と規律・命令を守ることは密接な関わりがあります。
遅刻をしない、練習前にグランド整備をすると言った部全体が守るべきルールから、先輩や監督などの立場が上の人の指示や命令は厳守するという習慣が、普段の練習の中で身に付いています。
規律を守るのは部活や学校だけでなく、仕事においても重要視されるのはもちろん、立場が上の人からの命令に対する忠誠心の高さは、仕事においても役立つ能力の一つです。
何かにつけて反論をしたり、ルールを守らず自分のやり方で進めようとする新入社員よりも、きっちりルールを守って行動し、上司の命令をしっかりきき行動する新入社員の方が教える側も安心でき、かつ職場の雰囲気が良くなるので好まれる人材となります。
第一印象が良くなる
体育会系はほかの部活動と比べると「体育会系」というだけで仕事が出来るように思われ、第一印象が良くなりやすい傾向があります。職場によっては過度に体育会系をプッシュしすぎて神格化することもあるほどです。
これは、体育会系がも体力やストレス耐性の強さ、上下関係への慣れ、規律・命令も守るといった仕事に必要な要素を、一から職場で鍛えなくてもよいという事へのお得感が大きく影響しています。
また、体育会系の人は、普段から声を出し挨拶ができるということから、初対面のひとからも親しみやすい人、真面目な人だと交換を得やすいので、それも加えて第一印象を押し上げる要因となっています。
さらに、体育会系は学生時代に自分が打ち込んでいたスポーツに関する話題やネタをもっていることから、年上の人からの反応も良く、スポーツがきっかけになって新たな交友関係が生まれやすいというのも特徴的です。
同じスポーツをやっていたからこそ、話し合える練習の辛さ、試合での緊張感、と言った苦労話を共有することで、お互いに腹を割って共感し合える仲へと発展しやすくなります。
体力があることで経験を積みやすい
新入社員が働き盛りのベテラン社員と同じような仕事っぷりをするのは稀です。
入社して間もない新入社員にとっては、どんどん仕事をこなして経験を積んでもらうのが、まず第一だと考えている会社も少なくありません。
どれだけ仕事量をこなせるかという点においては、体力がある体育会系が有利になります。
営業の数をこなす、雑務の数をこなす、先輩にご教授願いにいく…どれも、長く動ける体力やスタミナがなればあるほどこなせる仕事は増え、その分経験を積みやすくなります。
体育会系のデメリット
工夫が必要な仕事やクリエィティブな仕事に向いていない
規律ゆあ命令を守ることが得意な体育会系は、自分の頭で考えて工夫をする仕事や、何かを生み出すようなクリエィティブな発想が必要な仕事は不得意な傾向があります。
新入社員のうちはとりえあず上から言われた命令や規律を守っているだけでも問題ありませんが、部下を持ったり役職について人を指示する立場になったときに、柔軟な発想ができず自分が今までやってきた方法以外で人を指導することができません。
体育会系はマニュアルを守るのは得意な一方で、新たにマニュアルを作ったり、マニュアル作りのために物事を考えるのが苦手なまま年を取ってしまうのが体育会系で働き続ける上では気をつけなければいけない点です。
立場が上の人の意見に流されやすく「NO」と言えない
上下関係に沿った行動ができてしまうのは、集団への馴染みやすさにつながる一方で自分の意見を抑圧したり、上の意見に対して不満や疑問点があるのにもかかわらず「NO」と言うことができず同調圧力やストレスを感じる原因になります。
立場が上の人に対して気を遣いすぎるあまり、たとえ上の人が誤った判断や主張していると感じても、それに対して異を唱えると、今度は自分の立場が揺らぎ生活に支障が出ることを恐れて、誰も上の人に対してNOと言えず、イエスマンばかりの組織になってしまうこともあります。
社会人に限らず学生でも、体育会系の人が悪ノリをして周囲に迷惑をかけたり、「そんな悪ノリをする前に誰か止めなかったのかよ…」と思われるのは、えてして立場が上の人に気を遣いすぎた結果、誰もNOと言えなくなり暴走してしまうことが原因です。
立場が下の人に失礼な行動をとってしまい恨みを買う
上下関係とは見方を変えればヒエラルキーのある人間関係であり、権力を行使する人と権力に巻き込まれる人が出てくる人間関係でもあります。
当然権力を立場が下の人は、権力が上の人に楯突くことは難しく、これが原因で人間関係がギスギスしたり、いじめやハラスメントが正当化されてしまうことも起こりえます。
上下関係に対して厳しい体育会系の文化は、ときに下の人に対する自分の理不尽やわがまますら正当化してしまい、下の人間関係に恨みを買われてしまう原因になってしまいます。
例えば、先輩だからといって後輩に、自分の昔話や武勇伝を繰り返し延々と聴かせる行為。
先輩の自慢話とはいえ、何度も同じ話を聞かされるのは退屈ですし、自分の自由時間まで拘束されてしまって非常に不愉快に感じるのも無理はありません。
とはいえ、そのことを顔に出したら先輩に説教を食らうので、「話に興味がありますよ」という表情のまま内心「早く終わらへんかな…」と呆れている事でしょう。
このような行為は相手が「先輩」という立場だから渋々認めているのであり、これが先輩という立場の無い赤の他人であれば、わざわざ自分の貴重な時間を割いてまで話を聞く必要性も義理もありません。
先輩という特権を使われた以上、後輩はその特権に抗うのは非常に難しくなるので、この特権を乱用して行われた理不尽(場合によってはパワハラやセクハラ)により、怒りや憎しみ、恨みと言った負の感情を後輩に抱かせてしまう恐れがあります。
ルールや規律を守るという教えを大切にしている人が、その教えを破って上に逆らうのも、日々の先輩特権による理不尽の積み重ねが原因となる可能性は十分に考えられます。
体育会系以外の人間関係ではコミュニケーションができなくなる
体育会系はコミュニケーション能力が高いと思われがちですが、コミュニケーション能力の高さが発揮されるのは、自分と同じ体育会系の相手と話すときのみとなります。
体育会系の人が、体育会系以外の文化をもつ相手や人間関係で話す場合は、逆に体育会系の人は何を言ったらいいのかわからず、無口になってしまうこともあります。
体育会系は上下関係・規律・ノリという体育会系特有の空気感や暗黙の了解を理解した人同士のコミュニケーションは非常に得意で、とても友好的な人、社交的な人と見られがち。
しかし、体育会系のノリが通用しない場面では、今までの社交的な人だとは思えないほどに大人しくなってしまいます。
もちろん、この現象は体育会系に限らず文化系の人や理系・文系の人など、あらゆる人間関係にも当てはまることであり、コミュニケーション能力の高さは自分だけの力ではなく、自分が話す相手や集団によって上下してしまう特徴があることが主な原因です。
老化で体力が衰えた時に追い詰められ、精神的に病むことも
体育会系の売りである体力は、年齢を重ねるにつれて老化と共に衰えてしまうことは避けられません。
20代の働き方を30代、40代、50代でも同じようにできる人は稀で、年齢を重ねるにつれて体力の衰えは進み、ただ作業量をこなすような仕事のやり方を続けるのも難しくなってきます。
体力の衰えは体育会系の人にとっては、自分の唯一の強みを失うことと同じで、体力がなくなるにつれて焦燥感や不安、苛立ちや自分のアイデンティティが失われる事への恐怖を感じるようになります。
また、体力が衰え始めているときに、自分よりも若々しく体力のある新入社員を見ると、自分のいたたまれなさや不甲斐なさを感じたり、逆に体力がある新人に対して嫉妬の感情を抱き、先輩であることの特権を濫用して理不尽を強いることを正当化してしまうこともあります。
体力という年齢と共に衰えてしまうものだけに自分の精神的・経済的な安心感を委ねるのではなく、体力以外のスキルであったり、勉強であったり、会社以外の人間関係などに、安心や居場所を感じられるようにして、体力が衰えても強い不安に襲われないための準備をしていくのが大切です。