SNS・ネットで起きる炎上の拡散の威力を利用して、意図的に炎上するような内容の投稿をして、自分のブログ、メディア、サービス、商品を宣伝させる商売の仕方を「炎上商法」(あるいは炎上マーケティング)といいます。
炎上商法は成功すると、短期間のうちに多くの人に投稿内容が閲覧されることから、即効性があり宣伝費用が安く済むる宣伝方法として肯定的に見られることがあります。
炎上はSNS(主にtwitter)、匿名掲示板、ウェブメディア(コメント欄も含む)、そして近年話題になっているyoutubeなどのあらゆるコミュニティ内で投稿が拡散されますが、炎上が大きくなればそのコミュニティの枠を超えて拡散されることもあり、「手軽に多くの人に拡散される」という点だけ見れば、炎上商法は合理的だと考えることもできなくはありません。
しかし、一方で炎上のために不必要に人を挑発したり、過激な発言をすることからネガティブな印象を持たれてしまったり、「炎上商法に手を出した」という見られてしまい、その後のイメージが回復に多大な労力を要するリスクもあります。
「炎上」という言葉に対してよい印象を持っている人は少なく、「炎上=誰かのお騒がせになるようなこと」をしてまで、宣伝や認知度アップをしたことを受けて、否定的な印象を持つのも無理はない事です。
今回はそんな炎上商法が抱える問題点についてお話いたします。
炎上商法の特徴・手口
基本的に炎上商法は、ビジネスやマーケティングではなく普通の炎上を発展させたものになります。
炎上「商法」なので、犯罪自慢やグレー行為の自慢などのように、イメージを損なったり経済損失が発生するのが明確なものを火種にして投稿することは基本的にありません。
法に反しない程度の挑発・煽り行為、差別的な発言、過激な投稿、既にネット上で有名な人へにちょっかいを出す、などの議論を呼びやすい内容を火種として炎上商法は展開されます
挑発・煽り行為
ある特定の趣味嗜好を持っている人に向かって、挑発や煽りと取られるような発言を行うことを指します。
例えば、アニメ・漫画の趣味を持っており、自分のブログの閲覧数やyoutubeに投稿した動画の再生回数を増やすために
- 「このアニメを見ている奴はアホ」とアニメ視聴者を煽る
- 「この漫画よりもあの漫画のほうが断然面白い」と対立を煽る
などの、煽りの投稿と一緒に自分のブログやyoutubeのリンクを張って誘導するケースがあります。
なお、最初から煽りの投稿と一緒にリンクを張るのではなく、投稿が拡散されだしたのを確認してから、リンクをしれっ貼ってと宣伝し、あくまでも「炎上商法のために煽ったのではない」という体裁で行うケースもあります。
意図的に差別的な発言や過激な発言を行う
炎上しやすい話題としては以下のような話題があります。
- 学歴、出身校に関するもの
- 性別、ジェンダーに関するもの
- 働き方、職業に関するもの
- 政治、宗教、国籍、出身地に関するもの
- 障害、病気、健康に関するもの
- スポーツ、芸能人に関するもの
- 趣味・嗜好に関する話題
などの、議論を起こすのにふさわしい話題を選び、過激・極端・差別的な内容を投稿して意図的に炎上を起こします。
炎上後は自分のブログや動画に誘導したり、自分自身の認知度を上げるために、さらに炎上を招くような発言を定期的に繰り返すこともあります
有名人にちょっかいを出す
炎上を起こすといっても、自分のSNSのフォロワーが少なかったり、動画の登録者数が少なすぎては炎上が不発に終わってしまう可能性は否定できません。
既に認知度のある企業や団体や、炎上を起こせる(というよりは「バズ」を起こすと表現した方が適当な)立場にいるのならまだしも、全く知名度がない個人や団体はそのままでは炎上すら起こせません。
その時に行うのが、既にネット上で有名になっている人に絡んだり、ちょっかいをかけるという方法です。
芸能人の公式SNSアカウントやブログにコメントを残したり、既になのしれているyoutuberに対してコラボと称して、挑発や煽りを行い人目に触れることで炎上を起こそうとするのです。
被害者を演じて同情を誘う
炎上させるために「自分は何かしらの被害者ですよ」と同情を誘うような投稿をすることで、拡散され注目が浴びるケースはよくあります。
例えば
- 借金を返してもらっていない。
- 勤務先がブラック企業で不当な扱いを受けている。
- 個人で仕事をしているけど、変な客にストーカーされて困っている。
などの、自分は被害者であるということを主張した投稿を行い、かわいそうな人を助けたいという思う心理や、加害者を懲らしめたいという人の心理を利用して、拡散を狙います。
また、同情を引くための投稿には
- 自作自演が入っている。
- デマが混じっている。
- 脚色や誇張が入っている。
などの可能性があり、「かわいそうだから」という理由で安易に拡散できるものではありません。
もしも、同情を誘うような話題が拡散されているのを見た場合は、安易に拡散せず本当にその内容が事実なのかどうなのかを時間をかけて様子見することも大事です。
炎上商法が抱える問題点
悪い意味で有名になってしまい、宣伝の効果が薄い
炎上での拡散力により悪目立ちをしたために、多くの人の印象に残ります。
しかしその印象はあくまでも悪印象であり、認知度アップの割には売上や収入はそれほど伸びず悪評ばかりが残ってしまうことがあります。
そもそも、炎上を起こすために挑発や過激な発言をすることから、いい印象が残りにくいのは明らかです。
なお、実際に何かものやサービスを売るようなビジネスではなく、ブログやyoutubeの広告収入を増やすためのビジネスの場合は、とにかく炎上でもなんでもいいので閲覧数さえ増やせれ場それに比例して広告収入が上がるので、宣伝の効果はあるとも言えます。
しかし、炎上を繰り返していることで広告主から提携を拒否されて収入源がなくなることもあり、決して安全とは言えません。
ネガティブな情報がネット上に残り続けてしまう
炎上商法が成功した何かしらの利益があったとしても、それと引き換えに「あの人(or企業・団体)は過去に炎上を起こした」という事実が、炎上を見た人の記憶の中に留まらず、ネット上に残り続けます。
炎上商法が一段落して過去の投稿を削除する間に
- スクリーンショットで投稿した内容を保存される。
- ブログや匿名掲示板に投稿した内容がコピペされたりまとめられる。
- 動画での炎上の場合、動画が保存されてしまう。
という形で、自分が発信した情報が誰かのPCやスマホの中に保存されてしまうと、その保存された情報を元に、第三者が勝手にネガティブな情報を拡散されてしまいます。
こうなると、自分の投稿を回収することは困難になり、ネガティブな情報が不特定多数の人から勝手に閲覧・拡散される状況に陥ります。
とくに炎上のような自分に対してネガティブな情報が半永久的にネット上に残り続けると、その後炎上商法から足を洗ったとしても、注目されるたびに過去の炎上での発言がアップされ続け、イメージ回復が難しくなります。
「過去に炎上で有名になった」というイメージが付きまとう
炎上商法が失敗しようと成功しようと、過去に自分が炎上を起こしたという情報はなかなか消し去ることはできません。
炎上商法は知名度や認知度を上げるための売り出し方としては、邪道として見ている人が多いため、仮に成功しても「炎上を起こしたことで有名になった」という後ろめたさを背負って活動を続けていかなければいけません。
「デジタルタトゥー」という言葉のように、炎上商法に手を出したという事実はネット上に半永久に残り続け、刺青のように消したくても消せない黒歴史として不特定多数の人に見られてしまうリスクについてよく熟知しておく必要があるといえるでしょう。
炎上商法に便乗してくる人が出てくる
さきほど説明した「有名人にちょっかいを出す」のように、炎上で注目を集めたことで、その炎上にあやかるべく便乗してくる人が出てくることもあります。
- 炎上を起こしている人の名前や話題に関する自分の投稿をする。
- 炎上側を悪、自分は正義の立場を取り、炎上に関連する投稿をして自分の知名度を上げようとする。
- 炎上に対して擁護する意見を出して自分も炎上に巻き込まれるついでに、何かしらの宣伝をしようとする。
など、炎上を外から見物するポジションや直接炎上に関わるポジションで、ついでに自分の名も上げようとする人が出てくることがあります。
炎上の最中に擁護してくれたからと言って、純粋に自分を応援しているのではなく、逆に自分を踏み台にして利用しようとする人が近づいて来るという、まさに火事場泥棒のような人にであってしまうとも言えるでしょう。
炎上商法を何度も続けると、どうなるのか…
チキンレース化
炎上のために過激な発言を言うようになっても、その内容が炎上を始めた頃と大差なければ、見ている人も次第に慣れて反応が薄くなってしまいます。
そのため、更なる炎上を起こすためにどんどん投稿の内容がより極端で過激なものになったり、全く無関係の人に挑発や煽り行為を行い迷惑がられてしまうリスクがあります。
また、炎上を見ている人も、内心誰かが炎上のためにどんどん過激になっていく様子を楽しんでいたり、「そろそろやめておいたほうがいいのでは…」というラインを踏み越えて極端な投稿をすることを半ばエンターテインメントのように楽しんでいることもあります。
また、炎上を牽引するのは投稿者本人ではなく、その周囲の人というケースもあります。
過激な動画で注目を浴びたyoutuberが、ファンからの応援(と言う名の圧力)で無意識のうちにより過激な発言するように仕向けられてしまうのは、集団心理(群衆心理)によるものだと考えることもできます。
炎上芸以外は注目されなくなる
炎上で人気になったという評判が広がると、「この人は炎上芸、炎上キャラの人」よいうイメージが付き、炎上以外のキャラを演じても注目されなくなることがあります。
炎上商法を使って認知度を上げたあとに、自分が本来やりたかった芸やキャラをするのは難しく、上にも述べましたがどんなときでも「炎上商法をした」という事実が付きまとい、それに左右されることになります。
炎上で上げた認知度は維持しにくく、炎上以外の他のことをすると下がりやすく飽きられてしまう傾向があり、長続きしにくい売り出し方と言えます。